2018年度

第195回東アジア英語教育研究会

日時:3月16日(土)15:30-17:35
場所:西南学院大学1号館702教室
参加費:500円

発表1:台湾英語教育の改革と発展過程(1945-2018)」 平井清子(北里大学) 
〔要旨〕
本発表では,戦後から現在までの台湾英語教育の改革と発展過程を概観する。台湾の英語教育の変遷を鑑みると,戦後からの英語教育は台湾が世界と繋がり,高度な知識や情報を入手し,人的資源,経済・技術発展を進めることの媒体としてなされてきたことがわかる。1980年代後半から,とりわけ1990年代後半以降はグローバル化を進め国際競争力を高めるために重要視されてきた。
英語教育政策は戦後直後から1970年代までは政治的影響力を強く反映するものであったが,1987年に戒厳令が解かれ民主化がすすめられ, 2000年代に入ってからは,社会の変遷や人々の価値観といった民意を反映するものに移行していった。さらには,国民の英語能力向上のため取り組まれた政策は,国民全体の生活レベルや教育の向上に及び,社会の民主化と近代化に及ぼした影響が大きいことが示唆された。

発表2:「英語能力模擬試験におけるVR技術利用の検討」 Laura Maria Cortes Blanco (ラウラ・マリア・コルテス・ブランコ)(九州大学 博士後期課程)、冬野美晴(九州大学)
〔要旨〕
本研究では、没入感のあるバーチャルリアリティ技術(360度動画およびVRヘッドセット)を英語教育に使用する有効性を検討する。現代のVR技術を使用したアプリケーションは、医学教育、エンターテインメント、文化遺産教育など、様々な分野で使用・研究されている。
言語教育研究においても同様に研究が進んでいるが、未だバーチャルリアリティ技術の有効性の検証や応用研究は充分に行われていない。本研究では、英語能力試験における360度動画の使用に焦点を当てパイロット実験を行う。本実験では、TOEFLITP Testに基づいた模擬テストの聴解力(リスニング)セクションで、360度没入型動画(VRヘッドセット用)を使用する有効性を検討する。

 


第28回ESP研究会

日程:平成31年(2019年)2月23日(土)
時間:14:00から

発表:
 発表1.14:00~14:45
タイトル:Quick Speech and Write' in FYE classroom
    発表者:林 千晶(福岡女学院大学)
 発表2.14:55~15:40
タイトル:「英語オンライン協同学習の大規模化と学習者支援の可能性」
    発表者:荒木瑞夫(宮崎大学)
 発表3.15:50~16:35
タイトル:「グローバル教育―9年間の国際プロジェクトを英語・情報・教職課程の観点から評価 ―」
    発表者:鈴木千鶴子・石田憲一・吉原将太(長崎純心大学)

場所:熊本大学附属図書館1階
   ラーニングコモンズ(グループ学修室1)


懇親会:18:30~
#懇親会ご参加の方は2月20日(水)までに安浪宛にご連絡下さい。

連絡先:安浪誠祐(熊本大学)yasunami@kumamoto-u.ac.jp


第194回東アジア英語教育研究会

日時:2月16日(土)15:30-17:35

場所:西南学院大学1号館702教室

参加費:500円

発表1:「アカデミックライティング授業における学生主体のタスク活動とその意義」 福永 淳(九州工業大学)
〔要旨〕
アカデミックライティング授業では、主体的学びを育むタスク活動を通して、文章の内容を充実させ、学生のライティングスキル向上させて行くことが望ましいとされ、ピアレビュー等に代表されるペア・グループタスクや個々の推敲タスクが実践されている。しかし、到達目標を実現するための学びとなるように、学生主体のタスクをデザインすることは難しい。本発表では、発表者が実践しているタスクを紹介し、目標とする学習成果をねらうための足場掛け(scaffolding)方法を検討する。また、活動を行なった学生の振り返りを通して、アカデミックライティング授業における学生主体のタスク活動の意義を考える。


発表2:「宮崎県の高校英語教育の歴史に関する研究―1960年頃の宮崎県立福島高校を中心に―」 水島孝司(南九州短期大学)、安井誠(南九州短期大学)
〔要旨〕
本研究は、大修館『英語教育』1964年11月号に掲載された小川芳男の「忘れ得ぬ英語の授業」と題する報告をきっかけとしている。この報告の執筆当時、小川は東京外国語大学学長であったが、その数年前に参観した宮崎県立福島高校の英語の授業を印象的だったとして紹介している。しかし、その授業をだれがいつ担当したのかについて、発表者は現時点で特定できていない。
小川が感銘を受けた授業の内容をより詳細に把握し、それが宮崎県の高校英語教育の歴史の一部として継承されることを願っているが、本発表ではその目標に近づく第一歩として、1960年頃の福島高校における英語教育の実態把握を試みる。

第193回東アジア英語教育研究会


日時:1月26日(土)15:30-17:35

場所:西南学院大学1号館702教室

参加費:500円

発表1:「日本における異文化間能力を育成するための枠組み」 原 隆幸(鹿児島大学) 
〔要旨〕
本発表では、日本における異文化間能力育成するための枠組みを考えていく。これを考えるにあたり出てくるのは、「何をどこまで教えたらいいのか」という問題である。そこで、解決策を探るために、まず世界的に言語教育に影響を与えている「ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)」における能力記述文を考察する。次に、CEFRでは十分に扱えなかった異文化間能力を補う参照枠として、「言語と文化の復元的アプローチ参照枠(FREPA)」を取り上げ、そこにおける能力記述文を考察する。また、日本語教育における共通参照枠である「JF日本語教育スタンダード」を参考にしながら、日本における異文化能力を育成するための枠組みを考えてみたい。

発表2:「言語教育を通して日本人学習者が西洋型の論理性を学ぶことの意義と課題」 蒲原順子(福岡大学)
〔要旨〕
発表では、日本の言語教育において西洋型の論理的な思考力と言語力の育成を目指すことが文科省を筆頭に重要視されていることに注目し、西洋型の論理的思考力・言語力を身に付けることが日本的思考様式を持つ学習者に与えるであろう影響について、その意義と課題を中心に考察する。考察に当たっては、発表者が行った2つのパイロット・スタディ(英語教育、学校教育に関係する仕事をしている参加者によるパラグラフ構成に従って書いた作文と自由作文を自己分析)からの知見を参考にする。そして、論理的思考力・言語力を身につけることの意義を確認しつつ、それを身につけるには深い思考の段階的な掘り下げが必要であり、表現の習得にすり替わらないようにしないと思考が浅くなったり、均一になったりする危険があることを強調したい。さらに、西洋型の論理的思考力だけが目指すべき知性と考えるべきなのかという観点からも一考察を加えたい。つまり、文化的に多様な知的様式の存在について考えると言うことである。最後に、今後の日本の言語教育においては、「どういう知性を目指すべきなのか」という視点での考察の必要性を訴えたい。

 

 


第192回東アジア英語教育研究会

日時:12月15日(土)15:30-17:30

場所:西南学院大学3号館403教室

参加費:500円

全体テーマ:「これからの大学英語教育—学術的教養の涵養と学術的言語技能の育成を目指して」

発表1: EAPライティング教育におけるシラバス・デザインとタスク活動
寺内一(高千穂大学)・マスワナ紗矢子(目白大学)

アカデミックライティング教育におけるタスク活動について、授業の目標と評価との関連から考察する。シラバス分析(渡・マスワナ, 2017)を通して、大学でのアカデミックライティング教育の特徴は抽出できたが、一方で到達目標実現のために行われているタスク活動の実態把握には至っていない。そこで、シラバス調査対象となった科目の授業実施者へのインタビューを通してタスクについて調査し、タスクの分類および到達目標と評価方法とタスク活動の関連を調査する。


発表2: 英語学術論文執筆に必要な技能と知識 ― 英語教員の視点から
マスワナ紗矢子(目白大学)・高橋幸(京都大学)・金丸敏幸(京都大学)・笹尾洋介(京都大学)・田地野彰(名古屋外国語大学)

本研究では、英語論文作成技能と知識の向上を目的とした自律学習システムの構築に向けて、英語ライティング教授者が英語科目の授業で指導する必要があると考える執筆技能や知識について調査を行った。具体的には、英語論文作成の技能と知識を四種類に分類し、47項目からなる質問紙を開発し、アカデミックライティングの教育経験がある英語教員40名を対象として質問紙調査を実施した。その結果、論文作成技能の指導時期について、教授者間で意見が異なる項目が明らかとなった。発表では、それらの項目の学習を支援するタスクについても紹介する。


発表3: 再履修クラスから紐解くこれからの大学英語教育
桂山康司(京都大学)・吉田亞矢(京都大学)

俗にいう「再履」とは、学生のみならず教員にとっても悩ましい課題である。しかしながら、再履修クラス
の現状が物語るものは、通常クラスをいかに工夫して運営するべきかという問いへの答えを握っている。学術的教養の涵養を目的とするリーディングクラスと学術的言語技能の育成を目指すライティング―リスニングクラスの通常授業の運営方法について、各々の単位未修得者クラスを担当するなかでの気づきを基にして検討したい。
 

第191回東アジア英語教育研究会

日時:11月17日(土)15:00-17:35

場所:西南学院大学 西南コミュニティセンター2階 会議室

参加費:500円

発表1:「Writing eportfolio for STEM Majors: Its Limitations and Possibilities」 

Sunao Fukunaga (Kyushu Institute of Technology)

〔要旨〕
This action research showcases teaching artifacts about the implementation of an electronic portfolio project (eportfolio) in a college-level English as a foreign language (EFL) writing course for undergraduate STEM majors in Japan. It also aims to discuss the limitations and possibilities of eportfolio as a new pedagogical model for EFL writing assignment for evaluation. The data that will be presented includes a wide range of scaffolding activities: peer-review, self-reflection, writing journal, as well as the individual conference. Focus group discussions about the portfolio project were also conducted to receive student feedback for a better instructional design. With the increasing demand for linguistic production in college-level English writing courses, this multi-modal eportfolio assignment will provide students with an opportunity for self-exploration in their own learning while offering teachers a viable instructional model that facilitates students’ uptake in writing skills and techniques that they have acquired through the sequential writing tasks. Importantly, this instructional model is designed to deepen students’ understanding of key writing concepts: rhetorical situation, audience, genre, and purpose as well as to help transfer such conceptual knowledge to different genres of writing in which students will engage in college and beyond.

発表2:「A tale of two engineering students: exploring how NeuroELT learner strategies are applied in a postgraduate English and technology CLIL course」

Takashi Uemura (Yamaguchi University)

〔要旨〕
NeuroELT is an emergent interdisciplinary field in applied linguistics. This new discipline aims to elucidate how language learning takes place more effectively and how language teaching can influence learners more positively by applying findings from neuroscience. This presentation is a progress report of an ongoing case study that explores how two postgraduate engineering students with different backgrounds apply NeuroELT learner strategies in a small size English and technology CLIL classroom at a Japanese postgraduate engineering school. One student is a Japanese returnee from overseas with a CEFR B2 level. The other is a Japanese EFL learner possessing an intrinsic motivation to study at a postgraduate level overseas with a CEFR B1 competency. First, the presenter unveils a CLIL pedagogy from a NeuroELT perspective. This explanation was also demonstrated to the participating students as a NeuroELT learner strategy in the CLIL classroom: (1) power of learner predictions; (2) solvable mysteries and ‘aha!’ moment; (3) assessment in three ways and the brain. The interview results are then examined by means of content analysis and a discussion on how effectively the above strategies are used and what has been learned from these strategies by each student. Finally, utilizing results gained from the case study participants, an enhanced application of NeuroELT learner strategies is considered and suggested for postgraduate level CLIL English courses.

発表3:「高専における音楽・画像を活用した英語リスニング・スピーキング教材の開発」

 渡辺眞一(北九州工業高等専門学校)

〔要旨〕
本発表では①画像で示されたものを相手に説明するペア活動「Guess What」、②英語楽曲を用いたリスニング・音読・歌唱活動「名曲英語」を報告すると同時に、一部分は活動理解のために出席者の方々にも体験していただきたいと考えている。
①「Guess What」は、スクリーンに画像として示された4つの物体を、ペアのうちの一名がスクリーンを見ていない自分のパートナーに英語で説明(定義づけ)をし、時間内にすべてを答えさせることに挑戦する活動である。シンプルではあるがたいへん盛り上がる効果的なスピーキング活動であり、授業開始時に学生たちから「今日はやらないのか、今日もやりたい」と何度となく声を掛けられるほどである。また扱った問題は試験範囲となりテストに出題される。
②「名曲英語」は、(1)曲の紹介・歌手の紹介、(2)リスニングタスク、(3)歌詞内容理解、(4)歌詞音読、(5)歌唱、から成り立つ活動で、その後の授業においても開始時のウオームアップで帯活動的に全員歌唱を行う。これも歌詞が試験範囲となりテストに出題される。2017年に行った質問紙調査では「名曲英語は楽しい」が5点中平均4.57、「名曲英語はいい英語学習活動だと思う」は平均4.58と極めて高い評価を得ている。また「授業以外で「名曲英語」の曲を歌った(練習した)ことがある」に関しては約9割の学生が歌ったことがあると回答しており、授業外の英語学習につながっていることが示された。


事務局
原 隆幸



第190回東アジア英語教育研究会

日時:10月20日(土)15:30-17:30

場所:西南学院大学1号館702教室

参加費:500円

発表:「『ネイティブスピーカー主義』後の大学英語教育:プログラムの設計と運営を中心」
小田眞幸(玉川大学)
〔要旨〕
本発表では、現在進行中の科研費プロジェクト「ネイティブスピーカー主義」後の大学英語教育プログラムの開発」(基盤研究C:18K00792)の中間報告として、EFLからWorld Englishes,さらにはEnglish as a Lingua Franca (ELF)と英語教育プログラムのあり方の変化、そしてそれが大学英語教育に与える影響について論ずる。
Braj KachruらによるWorld Englishes (WE) の概念の浸透により、英語教育の目標もそれまでのネイティブスピーカー(NS)の言語能力を目指すものから、国際社会のおける通用性を重視するものに移り変わってきた。それに伴い英語教師としてのノンネイティブスピーカー(NNS)の価値についての議論が盛んになり、1990年代後半にはTESOLの中にNNEST Caucus (英語を母語としない教師のグループ)が発足し、英語教育におけるノンネイティブスピーカ-の存在がより明確になった。その一方で、あまりにもNS-NNSの区別にこだわりすぎることが、国際共通語としての英語教育プログラムの推進を妨げる原因となっている例もみられる。
ネイティブスピーカー主義についての研究は近年国内でもいくつか行われているが(Houghton & Rivers 2013, Toh 2016など)、本発表では特に大学英語教育プログラムにおけるNSの位置づけの変化と、それに対応する英語教育プログラムにあり方について全国の各大学のHPにある英語教育プログラムの紹介記事等からの例を交えて論じたうえで、今後も大学英語教育がどう変化する必要があるのかを中心にお話ししたい。


第189回東アジア英語教育研究会



日時:9月15日(土)15:30-17:35
場所:西南学院大学1号館702教室
参加費:500円

発表1:「大学教養科目における英語による『平和科目』の提供」 達川奎三(広島大学)
〔要旨〕
社会のグローバル化が急速に進み,激しい変化や新しい環境に対応できる人材の育成が求められて久しい。文部科学省(2008)によると,いわゆるグローバル人材に求められる資質には,(1)「語学力・コミュニケーション能力」(2)「主体性・積極性,チャレンジ精神,協調性・柔軟性,責任感・使命感」(3)「異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー」の3要素が必要であるとしている。しかしながら,(2)(3)の要素を外国語である英語を用いて育成するのは容易なことではない。日本国内を見渡すと,入学から卒業までの全てを,英語というツールで学ぶ大学や学部・学科・研究科が創設され,社会から高い評価を受けている。本発表は,このような時代の流れを受け,筆者が勤務校で提供した英語での教養科目「Global Issues Towards Peace B」の教育実践の紹介と受講学生の受け止め(評価)を報告するものである。

発表2:「大学入試英語長文問題におけるこの20年の縦断的調査―語彙・文法特性、テーマはどのように変化しているのか―」 柏木哲也(北九州市立大学)
〔要旨〕
本発表では、日本の大学入試問題英語の長文読解問題を分析することにより、今話題になっているEGP, ESPがどのような出題傾向となってその特徴を見せているのかを探索的に調査する。5種類のサブコーパス―国公立大学の英語の2次試験問題を1998年度分(98)、2008年度分(08)、2018年度分(18)の中で98と08及び18は縦断的変化、対象コーパスとしてTOEFL対策の市販問題集9冊分(TFL)とセンター試験の過去問(CTR)を共時的比較を加えてコーパス分析を行う。語彙・文法の複雑さ、難易度を中心に、出現頻度率に顕著な差が発見される項目を抽出し、内容面についてもその傾向(の変化)を分析する。見えてきたのは、5つのキーワードであり、今後の日本における英語長文問題の出題形式と内容及び入試制度の在り方を考察すると同時に、高等学校の語彙教育が「見えない変化」に対応できているのかに関しても問題提起を行いたい。




第27回ESP研究会

日時:7月21日 (土) 14:00 - 17:40
場所:熊本大学全学教育棟3階B302教室

発表1.14:00~14:45
タイトル:Can Students Independently Apply Cultural
Information in Their Professional Area?:
         Analysis of Student Outcomes in an ESP Course
    発表者:川北直子、Joel Hensley(宮崎県立看護大学)


発表2.14:55~15:40
タイトル:「農学semi-popularization記事における語彙の特徴」
    発表者:山本佳代(宮崎大学)

発表3.16:00~16:45
タイトル:「獣医学分野ESP教材の開発」
    発表者:荒木瑞夫(宮崎大学)

発表4.16:55~17:40
タイトル:「ESAPプレゼンテーションの指導」
    発表者:山内ひさ子(福岡女子大学非常勤講師)


懇親会:研究会終了後に開催しますが、参加希望の方は安浪宛( yasunami@kumamoto-u.ac.jp )にご連絡をお願いします。





第188回東アジア英語教育研究会

日時:7月28日(土)15:30-17:35

場所:西南学院大学1号館702教室

参加費:500円

発表1-1:「コーパスを用いた新しいEAP語彙リストの開発:BABILONプロジェクトの背景と狙い」 
石川慎一郎(神戸大学)
〔要旨〕
Academic Word List(Coxhead,2000)は,発表からすでに20年近くが経過しているが,コーパス頻度と内容的レンジの両面を考慮する語彙選定手法は手堅く,現在においてもなお有用な語彙表である。もっとも,AWLには,(1)元となるコーパスが非公開で検証できない,(2)コーパスに年代や地域の偏りが含まれている可能性がある,(3)語彙選定において頻度とレンジの両面を考慮している一方,最終的な重要度の決定は頻度のみで行っている,(4)英語学習者の多くは接辞について十分な知識を持っておらず,派生形を1語として扱わないのは不適切である,(5)頭字語や略号を一律に削除するのは問題がある,(6)学術英語で散見される語の中にAWLでカバーされていないものも少なくない,といった課題もある。
そこで,本研究においては,(1’)検証可能な公開コーパスのデータを用い(OpeN),(2’)年代と地域的なバランスを考慮しつつ(Balanced),(3’)頻度とレンジを合成した学術語彙重要度指標を基準として(Integrated),(4’)派生形を除外したレマの単位で(Lemma-based),(5’)頭字語や略号も包含する幅広い語の定義を採用した上で(Broad),(6’)GSL+AWLを超えるレベルを対象に(Advanced),学術語彙の選定を行うこととした。本研究で開発した語彙表は,以上の6つの理念の頭文字を並べ替えてBABILONと称する。

発表1-2:「『現代日本語書き言葉均衡コーパス』のブログデータを用いた内容ジャンル別オノマトペ使用状況分析:コアオノマトペの抽出に向けて」 王思閎(神戸大学大院生)
〔要旨〕
オノマトペは日本語を特徴づける語彙要素であるが,従来の日本語教育では体系的な指導が行われていない。今後,中上級の外国人日本語学習者を対象としたオノマトペ指導を考えていく場合,はじめになすべきことは,現実の日本語を丁寧に解析し,様々な分野で広く出現する「重要オノマトペ」を計量的に特定することである。発表者は,過去に,日本語の現代小説の重要オノマトペの抽出を行った。本発表では,新たに日本語ブログデータを解析し,重要オノマトペの特定を行う。

発表2:「ジェンダーの観点から見た東アジアの英語教科書について-男女の役割に注目して-」
日本の教科書編 石川有香(名古屋工業大学)、台湾の教科書編 相川真佐夫(京都外国語大学)
〔要旨〕
外国語教育の目的のひとつが,異なる立場の人々への理解を深めることであるならば,身近な他者である異性への理解,すなわち,男女共同参画社会への貢献が,現代の外国語教育に強く求められることになる。本研究では,ジェンダーの観点から,日本や台湾における社会問題,教育問題,英語教育を取り巻く状況を概観し,次いで,女性/男性に関する題材選定の状況や,女性/男性を含む写真や挿絵の使用状況を中心に,使用されている英語検定教科書を調査・分析し,教科書に見るジェンダー表象を明らかにする。


第187回東アジア英語教育研究会


日時:6月23日(土)15:30-17:35

場所:西南学院大学1号館702教室

参加費:500円

発表1:「音素認識教育の重要性:脳科学の研究から小学校英語学習への提言」 中野秀子(九州工業大学)
〔要旨〕
2020年度から施行される新小学校学習指導要領では3、4年生に外国語活動、5、6年生に外国語科が導入される。本発表では1) 小学生3、4、6年生がどのように英語の音を聞いているのか、課題実行中の脳血流変化の特徴を報告し、次に、2) 音と語彙のマッチングテスト課題実行中の5年生の脳波を測定して得た脳活動の特徴と音素認識能力の関係について報告する。
以上の脳科学的示唆を踏まえて、アメリカの幼稚園で視察したK2クラスでの音素認識教育、及び、小学校1年生のバイリンガル教育(スペイン語)での語彙教育を紹介して、音素認識教育の重要性を論じたい。また、韓国の小学校3年生の教科書の、Listening, Speaking, Readingのアクティビティーが繰り返される構成を紹介して、繰り返して音素認識教育を行う重要性も示したい。

発表2:「韓国の中学校英語教科書の構成に関する研究」 清永克己(日新館中学校)
〔要旨〕
教科書は、学習目標や教育内容を定めた学習指導要領に基づいて作られている。日本も韓国も学校の授業では教科書を使用することを原則としている。その教科書が、学習指導要領の改訂と共にどのように変わってきたのかを、これまでの文法事項や題材、語彙という学習項目ではなく、付録までを含めた教科書全体の構成について研究した。



第186回東アジア英語教育研究会

日時:5月19日(土)15:30-17:35

場所:西南学院大学1号館702教室

参加費:500円

発表1:「Speaking better English with today's easy-to-use technology」
田村忠子(朝日無線(株)、David Liew (Nobotel Inc.)
〔要旨〕
近年、語学学習環境が変化し、座席固定式CALL教室・LL教室の数が減少しています。その結果、「一斉録音」や「ペア会話の録音」、「一斉教材学習」等、先生主導での活動を実行する機会が以前より減っています。外国語・特に「話す力」を伸ばすには、ある程度緊張感を伴う「練習」が必要ですが、その時間が減っているのです。今回ご紹介致しますロボテル社(カナダ本社)では、 2012年にWiFiに対応したCALLシステムを開発致しました。タブレットや個人デバイス利用の普及が日本より早かった、 北米やヨーロッパで既に多くの納入事例がございます。福岡市内を拠点にしております、朝日無線㈱では、 2015年から当製品の国内販売を開始致しました。最新のテクノロジーを使ったCALLシステム及び準拠教材のご紹介と、ロボテル社アジア・太平洋地区マネージャーから最近のアジア地域での語学学習システムの動向についてご紹介致します。

発表2:「2020年以降の英語教育改革はどうなるのか―小学校の英語教科化と大学入試4技能に関する考察―」木下正義(元福岡国際大学)
〔要旨〕
1918年2月11日(日)、小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)主催、文部科学省後援の「小学校英語教科化記念全国シンポジウム福岡大会(於:アクロス福岡国際会議場)に友人の吉田研作先生(上智大学言語教育研究センター長)の基調講演を拝聴した。250名以上の参加者中で大学関係者は私一人であった。パネルディスカッションからの「日本の小学校英語教科化の将来と展望」と「小学校英語担当者の養成とアジア・欧州諸国の調査・考察を論じたい。


第185回東アジア英語教育研究会

日時:4月21日(土)15:30-17:30

場所:西南学院大学1号館702教室

発表1:「教材開発へのTask-basedアプローチ」
Chris Valvona(沖縄キリスト教学院大学)
Title:
A task-based approach to materials development
Subtitle:
Developing materials that work for your students
Abstract: There are thousands of textbooks to choose from, the vast majority of which have been carefully planned and written. And yet, many teachers find themselves unsatisfied with the class textbook, for many different reasons. This presentation will explain how the presenter’s own problems with materials for oral communication classes led to the development and publication of a textbook. The presenter will explain his experience with task-based teaching and developing task-based materials, and how the task-based approach made it possible to adapt materials to various classroom realities. The presentation will end by suggesting how teachers can develop materials suitable for their own individual situation, and will also share some tips on getting published.

発表2:「日本の大学英語教科書におけるELFを考える」
津田晶子(中村学園大学)・金志佳代子(兵庫県立大学)
〔要旨〕
日本の文部科学省は、グローバル人材育成を目標に掲げており、各大学において海外への留学の奨励、外国人の留学生の受け入れ、専門教科の英語での講義の増加に伴い、英語教育の改革が急務である。日本の大学では、ESLのinternational marketed textbookだけでなく、日本語を母語とするELFスピーカーである日本人教員と日本人学生を対象として、日本の大学英語教材出版社が教材を出版しており、これらは日本人教員が主に執筆するか、英米のニュースサイトなどを元に編集し、日本の大
学市場のみで流通している。
この発表では、洋書と和書の教科書の違いを比較し、後者の教材に焦点をあて、13社の大学英語教科書によって運営されているウェブサイトを元に、(1)どのようにカテゴライズされており、どのようなカテゴリーが出版点数が多いか、(2)ELFの視点でデザインされた教科書にはどのようなものがあるかを分析する。そして、ELF話者である教員および学生にとって理想的な教材の条件について、検討する。

発表3:「メディア英語の積極的活用法」
田上優子(福岡女子大学)
〔要旨〕
時事英語を扱う教材は、出版されるまでの版権許諾などにも時間を要するため常に最新情報を掲載できない難点はある。しかしながら生涯学習を見据えた上でも、発信力のある自律学習者を育成するためにも推奨される内容を含んでいる。また経年教材の内容でも表現の多様性を学びとることができる。このように考えると初年次教育で読まれる教材(テキスト)としてのみならず、上級年次の学生の英語学習媒体として、発展的な活用ができる教材が求められている。発表では、広くメディア英語に利用できる教材を概観し、その効果的な利活用について考える。

 


第184回東アジア英語教育研究会

日時:3月17日(土)15:30-17:35

場所:西南学院大学1号館702教室

発表1:「大学生の短期海外研修はどのような効果があるのか:研修前後のテスト結果から」 徳永美紀(福岡大学)

〔要旨〕 大学の長期休暇を利用して参加できる、1ヶ月以下の短期海外研修に参加する学生は増加傾向にあり、平成28年度の参加者は6万人以上にのぼる。大学が実施するプログラムの中には支援金が支給されたり、単位を修得できるものもある。しかし、数週間の語学研修は英語力の向上にどの程度効果があるのであろうか。本研究は、短期海外研修に参加する大学生に、出発前および帰国後に一連のテストを受験してもらい、研修の英語力への効果を測定しようとするものである。研究初年度である29年度は12名の協力があったが、今回の発表では夏の研修に参加した5名の結果を中心に報告する。

発表2:「多読指導導入による可能性と課題~学習意欲や4技能の向上に向けて~」 仲山雄二(熊本県立岱志高校)

〔要旨〕 高校では、英語に苦手意識を持ち、長文等を読むことを何よりの苦痛としている生徒達が存在する。近年、そうした課題に対応する方策の一つとして注目を集めているのが、「多読」である。多読は、学習者が自らテキストを選び、日本語に訳すことなく英語そのものを頭から理解して楽しく読み進めていくうちに自然と英語の本来の楽しさを味わい、英語学習に対する意識を根本から変えることができる、とも謳われている。 多読指導は、20世紀初頭にHarold Palmerによって提唱され、近年ではDay&Bamford(1998)による多読指導への取り組みが世界的にもまた国内的にも大きな反響をよび、広がりを見せている。 しかし、公立学校において「多読指導」を行うには、多読図書購入のための多大な予算や、多読指導そのものの時間の確保、生徒達の習熟度に合った指導法の検討など、多くの課題が存在する。 本校では、多読指導のメリットを生徒たちの英語に対する興味・関心・意欲の向上につなげ、英語の4技能の向上を目指し、更には思考・判断・表現を有機的に関連付ける教室内活動を指導に取り込むべく、多読指導導入の模索検討を行っている。 本発表では、多読指導導入による読解力や4技能向上、リーディングストラテジーの獲得など様々な学習効果や、生徒たちの情意面における意識変容の可能性と、現状としての課題について、本年度の取り組みから考察して発表を行いたい。

 

 

第183回東アジア英語教育研究会

日時:2月17日(土)15:30-17:35

場所:西南学院大学1号館702教室

発表1:「English Medium Instruction in STEM courses in the Japanese Higher Education」 福永淳(九州工業大)
〔要旨〕 日本の高等教育では英語のみで修了できる学位プログラムを増やすため、英語を教授言語とする専門課程の講義(English Medium Instruction)が推奨されている。「英語FD」と呼ばれる英語講義推進のための様々な教員研修が多数行われ、英語で講義を受講する学生の英語力を上げるため、TOEIC等の外部英語試験の得点を、英語の成績に加味したり、進級判定基準としたりする大学も出てきた。例え専門科目で要件を満たしていても、英語の得点が足りなければ進級が出来ない大学もある。今後、EMIの更なる広がりが予測される中、本発表では、英語講義を担当する教員の声も取り上げ、STEM分野専門課程でのEMIが抱える影響や問題を考察する。

発表2:総タイトル「グローバル人材育成のための九州大学の英語教育:課題と展望」 (九州大学グループ) 「この20年の九州大学の英語教育の概観」 志水俊広(九州大)

〔要旨〕 九州大学の全学教育(昔のいわゆる教養課程;現在九大では「基幹教育」と称する)における英語教育は、この20年間で1999年、2000年、2014年の3回カリキュラムを改定してきた。それぞれのカリキュラムの特徴を中心にこの間の九州大学の英語教育を概観し、以下の3つの発表へとつなげていく。

「Why is Q-LEAP doomed to be short-lived?」 井上奈良彦(九州大)

〔要旨〕 This paper examines several factors that influence the development and management of an English curriculum and suggests that a well-intended curriculum may not survive some persistent obstacles.

「共創学部の英語教育:課題解決力の育成を目指して」 内田諭(九州大)

〔要旨〕 平成30年度に開設される九州大学共創学部のカリキュラムでは「徹底した語学教育」が柱の一つとして掲げられている。それを実現するために、1年次に履修する「英語インテンシブコース」の設計が進められている。このプログラムでは時事英語・学術英語の習得を通して、共創学部の目標の一つである課題解決力の育成を目指す。本発表では、英語インテンシブコースの概要を示し、そのあり方について議論する。

「The Feasibility of Teaching a Science-based English Course within the Faculty of Languages and Cultures EAP Program at Kyushu University」 Shaun O’Dwyer(九州大)

〔要旨〕 This presentation offers some preliminary thoughts on the feasibility of developing and teaching a scientific English course within the new EAP curriculum in Kyushu University’s Faculty of Languages and Cultures. The course would be based on the Active Learning of English for Science Students (ALESS) curriculum currently being taught at Tokyo University. Consideration will be given both to the potential for such a course to help contribute to Kyushu University’s “Breakthrough Top One Hundred” and “Super Global Type A Research University” objectives, and to the potential for institutional obstacles to impede its successful development. ------------------------------------------------------------------------------

第182回東アジア英語教育研究会

日時:1月20日(土)15:30-17:35

場所:西南学院大学1号館702教室

発表1:「香港の中等教育における教育言語の変遷」 原隆幸(鹿児島大学)

〔要旨〕 香港において、学校教育における教育言語は重要な問題の1つである。植民地香港における中国社会は伝統的にエリート社会であり、一部のエリート層が英語や文語中国語に堪能であれば十分であった。戦後の香港では一般教育が普及し、大衆が英語学習の機会を求めるようになった。また、国際語としての英語の重要性が認識され、子どもの将来の選択肢を多くするために、英語を教育言語とする学校に入学させる傾向が強くなっていった。中国に返還された香港では、さらに複雑さを増している。そこで本発表では、返還前と返還後の香港の中等教育における教育言語の変遷を取り上げる。最後に、日本の中等教育の教育言語についても考えてみたい。

発表2:「日本の公立小学校における内容学習/ CLIL型小学校英語教育の可能性について考える-公立小学校での実践授業をもとに-」 蒲原順子(福岡大学非常勤講師)、祁答院惠古(荒川区、中野区小学校英語教育アドバイザー)

〔要旨〕 発表者2名は、内容重視型(以下CBI) / 内容言語統合型学習(以下CLIL)を日本の公立小学校に取り込むことについて、それらの定義と理念を踏まえ、実際に行った実験授業と児童のフィードバックを中心に考察を試み、現状を考慮に入れたCBI/CLIL的な要素を取り入れた英語の授業の可能性を示唆する。まず、米国を土壌とするCBI とヨーロッパを土壌とするCLILの背景と定義、理念を、概観し、それらの相違点を確認し、日本の公立小学校の現状に照らし合わせ、どの部分が取り込めるのかを考察する。又、その際、文科省の小学校英語に関する理念や指針にも目を向ける。次に、CBI/CLILの要素を取り入れた公立小学校での高学年を対象とした「外来語」をテーマとした実験授業を紹介する。そして、指導案と授業の分析、児童のフィードバックの分析などから、日本の公立小学校の現状から離れない無理のないCBI/CLILを取り入れた授業の方法を提案する。最後に、CBI/CLILを取り入れた授業の意義と問題点にも触れる。 ------------------------------------------------------------------------------