第173回東アジア英語教育研究会
日時:3月18日(土)15:30-17:35(発表①15:30-16:30、発表②16:35-17:35)
場所:西南学院大学1号館702教室
発表1:「日本人英語学習者の読み書き障害:研究の現状と課題」 雪丸 尚美(北九州市立大学)
〔要旨〕 本発表の目的は、日本人英語学習者の読み書き障害に関する研究を概観するとともに、今後の課題を明らかにすることである。英語圏では人口の6~10%程度に読み書き障害があると言われ、主要な学習障害の一つである。英語圏では音韻意識の障害が読み書きに影響すると考えられている。日本語圏では有病率が1%未満~3%と低いこともあり、読み書き障害についてあまり認知されていない。日本人英語学習者に関しても、音韻意識の弱さが習得困難の原因となる可能性が指摘されているが、日本人の英語の読み書き障害については研究が非常に少ない。そこで本発表では、日本人英語学習者の読み書き障害に関する近年の研究を概観し、今後の課題について述べる。
発表2:「日本人大学生の口頭産出の正確さ:文法性判断テスト及び筆記テストとの比較」 徳永 美紀(福岡大学)
〔要旨〕 本研究は、日本人大学生の英文法知識と産出における文法の正確さを比較しようとするものである。まず知識の測定として、Ellis (2005)を参考に絞った16の文法項目についてルールテスト及び文法性判断テストを行った(N
= 345)。次に産出の測定として、同じ16項目に関して短文日英 翻訳の筆記テストを行った。さらに、協力者45名に対して、口頭 の短文日英翻訳テスト及び口頭と筆記の絵描写テストを実施した。
今回は、口頭テストに参加した45名のデータを中心に、知識と産 出の差、筆記と口頭の差に注目しながら発表する。
第172回 東アジア英語教育研究会
日時:2月18日(土)15:30-17:35(発表①15:30-16:30、発表②16:35-17:35)
場所:西南学院大学1号館702教室
発表1:「Inferential questionsによって思考を刺激し、考えを伝え合う生徒を育てるための方策」 合瀬 天規(佐賀県 鹿島市立西部中学校)
〔要旨〕 今日の中学校英語リーディング指導の課題の1つに,教科書の英文テキストの内容をどのように生徒に深く理解させ,テキスト内容を基にどのように生徒の意見や考えを英語で表現させるかということが挙げられる。その課題を克服するために,読解指導において教師が発問を効果的に活用することが指導方策の1つと考える。読解発問は,事実発問,推論発問,評価発問の3つのタイプに分けられ(Been, 1975),その中でも特に推論発問,及び,評価発問には,生徒から異なる解釈や考え方を引き出す特徴がある。テキスト情報を読む生徒の動機を高める,生徒の読みを深く豊かにする,生徒同士の協働学習を促すなどといった,発問構成による様々な効果を考察する。
発表2:「「佐賀メソッド」実践報告」 吉田 喜美子(吉野ヶ里町立三田川中学校)
〔要旨〕 佐賀県中学校教育研究会英語部会は,表現の能力と理解の能力の統合的育成を目指して指導法改善に取り組んでいる。具体的には、3年間で到達すべきゴールを明確化し,活動への意欲を高める手立てを取り入れながら、「Small
Output活動」やOutput活動といった4技能を統合した言語活動に繰返し取り組ませることによってゴールの達成を目指している。 平成21・22年度は「基礎的,基本的知識・技能をすすんで活用する力を培う『三神メソッド』の研究-理解と表現をスパイラル化した指導過程において-」というテーマで、佐賀県東部地区において先行的に実践研究を行った。平成23以降は,先行研究の課題であった「身に付けた英語力を使って何ができるようになるのか」の解決を目標に,テーマを「自ら発信する力・人と関わり合う力を育てる『佐賀メソッド』の研究-Small
Output活動を軸としたBackward Designによるプロジェクト型学習において-」とし,県内の英語担当者全員で4技能を統合した言語活動に繰返し取り組ませる実践研究に取り組んでいる。
本発表では、具体的な指導過程、県内担当者への研究推進のプロセス、実践例を発表するとともに、成果と課題について述べる。
第171回 東アジア英語教育研究会
日時:1月21日(土)15:30-17:35(発表①15:30-16:30、発表②16:35-17:35)
場所:西南学院大学1号館702教室 発表1:「日本における言語化教育のあり方」 原 隆幸(鹿児島大学)
〔要旨〕 近年、日本ではグローバル人材の育成が急務であり、その育成は大学に求められている。実際に文部科学省はグローバル人材育成推進事業を行う大学を公募し、補助金を出している。採択された大学の事業内容を見ていくと英語教育の改善を謳っているものが多い。しかし、英語力=グローバル人材ではない。グローバル人材に求められるのは英語をはじめとする語学力だけでなく、言語化教育も重要である。そこで本発表では、日本における言語化教育の在り方を取り上げる。特に、大学で何をどこまで教えたらいいのかCEFRなどを再度考察し、その指標を考えてみたい。
発表2:「英語教育で批判的思考力を育てることの意味と課題」 蒲原 順子(福岡大学)
〔要旨〕 本発表では、英語教育において論理的な思考を伴う言語活動を育成することの意義と課題について、言語面だけでなく日本人と欧米人との思惟方法や世界観の違いを掘り下げ、考察を行う。文科省によれば、「我が国の子どもたちの思考力・判断力・表現力等には依然課題がある。また,課題発見・解決能力,論理的思考力,コミュニケーション能力や多様な観点から考察する能力(クリティカル・シンキング)などの育成・習得が求められているところである。」として、すべての教科においてこの点に留意した言語活動を促進するよう指導することが求められている。ここで、2つの問題が考えられる。ひとつは、上記のような論理的思考力や表現の方法がトップダウンで教えられる傾向があることである。つまり、自己の中から沸き上がるような疑問や体験がないところで、形から教えられることで、こども達の真の思考法の育成ができるのかという疑問がわくのである。この背景には日本人の根幹にある日本的な思惟方法が西洋のそれとは異なることが大きく関っている。2つ目は、論理的思考力やそれに伴う言語表現を育成することを教育目標とする裏には日本語の持つ日本的思惟方法が切り捨てられてしまう危惧があることである。この問題に関連して、発表者が協力者を得てある研究会で行ったことばに関するワークショップとその後のフィードバックから得た示唆を紹介し、英語教育の目指す知性とは何かについて参加者と議論したい。
第169回、170回東アジア英語教育研究会
日時:12月10日(土)13:00-17:30
場所:西南学院大学東キャンパス大学院棟4階
テーマ:「テスト・データを用いた言語習得研究の可能性と課題」
受付開始:12:30~
開会の辞 事務局次長 片桐一彦(専修大学):13:00-13:10
研究発表(13:10~13:40, 13:50~14:20, 14:30~15:00)
1. 「日本人英語学習者によるtough構文の理解」 伊藤彰浩(西南学院大学)
2. 「副詞の位置と意味の指導:英語教育におけるカートグラフィーの援用可能性」 西村知修(西南学院大学大学院博士後期課程)
3.「プロトコルを用いたC-Testの構成概念的妥当性の検証」 木屋みなみ(福岡大学附属大濠中学校)
休憩・歓談 15:00~15:30
卒業論文発表会(テーマ:「ことばの学習と習得を科学する」) (15:30~15:50, 15:55~16:15, 16:20~16:40, 16:45~17:05)
4. 「英語を専攻する大学生に対する個人別態度構造分析: 学習動機はどこからくるの」 高山友希(西南学院大学4年)
5. 「難読症学習者にとって識字困難な英単語の特徴: C-Testデータ による分析」 川原 峻(西南学院大学4年)
6.「カタカナ英語の理解における難度決定要因: 日本語的要素と英語的要素の関係」 奈須瑞穂(西南学院大学4年)
7. 「教師の英語発音が日本人児童の英語発音に与える影響」 馬場友理奈(西南学院大学4年)
総合討議(17:05~17:30)
閉会の辞(17:30)
懇親会(18:00~20:00)
参加費 JACET会員、東アジア英語教育研究会参加者、JLTA会員は無料。その他、一般参加者は500円。
第170回東アジア英語教育研究会
日時:12月10日(土)15:30-17:30
場所:西南学院大学2号館202教室
全体テーマ:「これからの英語授業を考える」(京都大学大学院)
発表1:「意味順」を用いた英文読解指導—探究的実践で浮かび上がる成果と課題— 加藤由崇(中部大学)、笹尾洋介(豊橋技術科学大学)、髙橋 幸(京都大学)、田地野彰(京都大学) 〔要旨〕 本研究の目的は、「意味順」を用いた英文読解授業において教師と学習者が共に直面した‘puzzles’の協働的な探究過程と、その中で浮かび上がった成果と課題を報告することにある。「探究的実践(Exploratory Practice)」(e.g., Allwright, 2003, 2005)の枠組みのもと、1名の教師と英語に苦手意識を抱く39名の大学生が、英文読解における「意味順」の意義や活用法をいかに解釈・理解し、授業内での指導・学習へと繋げていったのか、その探究過程を検討する。
発表2:アカデミック・ライティング教育の動向―シラバス分析から 渡 寛法(滋賀県立大学) 〔要旨〕 本研究の目的は、日本の大学で行われている日・英アカデミック・ライティング授業のシラバス分析を通じて、発展期と呼ばれる日本の文章表現教育の現状と課題を把握することである。初年次教育や学術文章授業、学術英語ライティング授業のシラバスを収集し、テキスト・マイニングの手法を用いて分析する。日・英アカデミック・ライティング教育の相違点を、授業内容や到達目標の比較で明らかにする。
発表3:「詩とは何か」からはじまる音声指導―英詩研究者からの提言 桂山康司(京都大学) 〔要旨〕 通常の科学的言語理解から始まる音声指導に対して、「詩とは何か」から始まる音声指導というのは、具体的にはリズムの体得から始まる音声指導を意図しています。物理的音韻理解ではなく、何故、まずリズムの体得なのか?分析的科学知(logos)に対して、総合的物語知(mythos)のもつ直覚的理解を優先する言語習得の方策を、理論的背景から説き起こし、初等教育にも適応される音声指導上の実際にいたるまでの見取り図を提案したい。
第168回東アジア英語教育研究会
日時:10月22日(土)15:30-17:35(発表①15:30-16:30、発表②16:35-17:35)
場所:西南学院大学1号館205教室
発表1:「入試改革への提言―日本と台湾の大学入試英語問題の比較分析から見えるもの―」 柏木 哲也(北九州市立大学)
〔要旨〕 本発表では、日本と台湾の大学入試問題英語の長文読解問題を分析することにより、今話題になっている入試改革が向かう方向性を議論する。6種類のサブコーパス―国公立大学の英語の2次試験問題を1998年度分(98)と2008年度分(08)、大学入試センター試験(CTR)、TOEFL対策の市販問題集9冊分(TFL)、台湾の「学科能力測験」(T1)と「指定科目考試」(T2)―を作成し、98と08は通時的・縦断的変化、残りCTR, TFL, T1, T2は共時的・横断的比較を加えてコーパス分析を行う。語彙・文法の複雑さ、難易度を中心に、出現頻度率に顕著な差が発見される項目を抽出し、内容面についてもその傾向(の変化)を分析する。見えてきたのは、5つのキーワードであり、今後の日本における英語長文問題の出題形式と内容及び入試制度の在り方を考察すると同時に、高等学校の授業内容が「見えない変化」に対応できているのかに関しても問題提起を行いたい。
発表2:「アウトプットを促進するためのインプット素材と指導 -ラジオ・ドラマの有用性-」 達川 奎三(広島大学)
〔要旨〕 本研究の目的は,大学教養教育英語ライティング授業におけるラジオ・ドラマ使用の有用性を検討することである。学習者の聴解力育成に関わって,映画やテレビ・ドラマなどの視聴覚教材の利点については多くの報告がある。しかしながら,外国語教育におけるラジオ・ドラマの活用についての報告は少なく,とりわけ作文指導における有用性の報告はほとんどない。本発表では,ラジオ・ドラマをライティング活動のインプット素材として用い,教材や授業内容に関する学習者(77名)の受け止めなどについて調査した結果を報告する。調査結果からは,学生の専攻や英語習熟度などが異なっても,作文指導におけるラジオ・ドラマのインプット素材としての有用性が支持された。
第167回東アジア英語教育研究会
日時:9月17日(土)15:30-17:35(発表①15:30-16:30、発表②16:35-17:35)
場所:西南学院大学2号館202教室
発表1:「文体論的工夫についての知識が英語学習者による文学の読みに与える影響」 柿元 麻理恵(広島大学大学院)
〔要旨〕 日本の英語教育の場においては、コミュニケーションのための英語が重視されるようになるに従い、題材もより日常的・実践的・実用的なものが用いられるようになってきた。その結果、現在日本の英語教科書・テキストに文学作品はほとんど用いられていない。しかし、特に大学に於いては、英語の授業における文学作品の使用が完全になくなってしまったわけではない。学習者からの反応を見ると、文学を用いた英語の授業に対して概ね肯定的なフィードバックを残しており、このような授業が日本人英語学習者にとってある程度肯定的な成果を出している事がわかる。そこで、本研究では以下3点を明らかにすることを目的として実験を行った。1)日本人英語学習者は自力で文学作品を読む際、どのような点を、何故面白いと考えているのか、2)その際どのような直感的反応を見せるのか、3)文体論的工夫についての知識を得た後、協力者の読みと直感的反応はそれぞれどのように変化するか。
発表2:「カタカナ英語から見える小学校児童が持つ英語感」 森 礼子(元福岡県立大学)
〔要旨〕 この発表では、カタカナ英語の検討を通して初歩的英語リテラシーの出現を論じ、小学校英語教育現場での教え方について考える。データ収集は北九州で実施され、現在2年目である。参加者は同一教員が学級担任として教える4年生(平成27年度)と翌年の5年生(28年度)である。児童は4年次に月1回、5年次に週1回の英語体験授業を受講している。収集したデータは授業観察記録、教員・児童とのインフォーマルな会話内容の記録、児童の書き物のサンプル(ノート、作文等)、教室内の掲示物で児童が作成したもの(図工作品、ポスター、お知らせ等)の写真である。
発表では、児童が掲示物で使用したカタカナ英語を検討し、初歩的英語リテラシーの芽生えについて考察する。これは、カタカナ英語は厳密には英語ではないため、英語リテラシーの芽生えに関する考察からは除かれやすいが、児童の使ったカタカナ英語は児童が概念として英語をどう捉え自分自身の言語システムに取り込んでいるかを示していると思われるためである。最後に小学校レベルで英語をどう教えたらいいかを考える。
第166回東アジア英語教育研究会 (←clickすると詳細をご覧いただけます。)
日時:7月16日(土)13:30-16:00場所:西南学院大学2号館302教室
シンポジウム趣旨 研究手法としてのコーパスの特性の1つは,データ分析の手法や枠組みが,個別言語を超えて,様々な言語にそのまま応用しやすいことである。本シンポジウムでは,6本の研究実例を通して,コーパス活用により,英語・日本語・中国語に関してどのような知見が得られるのかを実証的に議論していく。個々の分析実例を相互に比較することで,いわゆる「コーパス準拠言語研究アプローチ」の中に,個別言語に紐づく部分と,個別言語に限定されず,汎言語的に応用可能な部分が存在することが示されるであろう。本シンポジウムが,従来は英語や日本語に限定されがちであったコーパス言語研究の一層の普及の一助になれば幸いである。
シンポジウム・オーガナイザー 石川慎一郎(神戸大)
個別発表の概要
石川 慎一郎「これからのコーパス語彙表の展望:新JACET8000(2016)の開発理念」
旧JACET8000がBNC全体から得た頻度を根拠資料としていたのに対し,新JACET8000は,BNCとCOCAの10ジャンルから得た頻度を統計的に合成することで,英米差やジャンル差を考慮したバランスのよい語彙選定がなされている。また,日本人大学生がこれまでに触れてきた英語,現在触れている英語,さらに,近い将来に触れるであろう英語を加味した補正資料を用意し,日本人大学生の英語語彙学習の指針としての妥当性を高めている。本発表では,語彙表の作成理念と作成過程を詳細に紹介し,今後のコーパス準拠語彙表の作成法について概観する。
中西 淳 「日本人L2英語学習者の前置詞使用パタン:習熟度の影響」
学習者の習熟度測定にはTOEICやTOEFLといった標準的な習熟度テストが広く使用されているが,評価と学習の一体化を目指し,反復的・継続的な評価を行おうとする場合,そうしたテストとは異なる評価のオプションも検討されるべきである。本発表では,学習者にライティングを行わせ,そこに出現した前置詞頻度を計量することで学習者の習熟度を簡易推定する方法について予備的な提案を行う。本研究では,中高生の作文を集めたJEFLL,大学生の作文を集めたICNALE,さらに個人大学生が米国留学中に書き溜めた日誌をデータベース化したJournal Writing Corpusの3種のコーパスを使用し,前置詞頻度から学年・(TOEICスコに基づく)習熟度・英語圏滞在期間を予測するモデリングを試みる。
栁 素子 「中国語可能表現の諸相:能/能够の差異の解明」
能と能够は,ともに,主体が能力を有しているか,必要な条件が揃っていて,何かが実行可能である場合に使用できる中国語の可能表現である。これら2語の差については,従来,「能は話し言葉で,能够は書き言葉で多用する」ということが言われているが,一方で,一部の例外を除いては,「能够はすべて能に置き換えられる」とも言われている。本研究は,コーパスを用いて,能/能够の頻度・共起語を調査し,従来,必ずしも明らかでなかった2語の差の解明を目指そうとするものである。 ・隋 詩霖 「中日広告言語の比較:化粧品広告の分析」 近年,日本語学習者の学習動機は多様化しており,中国においては,日本のファッション誌や,そこに掲載された化粧品広告などを通して日本語への興味を抱く事例も少なくない。日本語化粧品広告に使用される言語は,日本語として必ずしも難しいものではないが,特殊なジャンル専門語,倒置,省略,間接表示など,中国の化粧品広告には見られないさまざまな言語的特徴があり,初級の日本語教育を受けただけでは,その内容を把握することは困難である。そこで,本研究では,独自に開発した日中化粧品広告コーパスを分析し,日本語化粧品広告言語の語彙的特性について検証を行い,初級日本語教育を受けた学習者が日本語の化粧品広告を読もうとする際に要求される語彙知識の同定を目指す。
張 晶鑫 「日本語オノマトペ『だんだん』および類義語の関係性」
日本語のオノマトペ「だんだん」は副詞として広範に使用されているが,その類義語である「次第に」「徐々に」などとの用法差はこれまでの研究でも完全には明らかになっていない。本研究では,BCCWJの多角的分析をふまえ,3語の表記・頻度・言語使用域・共起パタンなどを計量的に解析し,3語の差異の同定を目指す。
・肖 錦蓮 「日本語教育の観点から考える女性文末詞」 「かしら」「だわ」といった女性文末詞は,実際の日本語会話ではほとんど消失しているとされるが,一般的な日本語小説における使用頻度が近年どのように変化しているかは必ずしも明らかでない。そこで,本研究では,BCCWJの書籍(小説)データの年代別頻度分析を行い,女性文末詞の使用状況の変化を計量的に同定するとともに,個々の女性文末詞の典型的共起環境を明らかにすることを目指す。
第165回東アジア英語教育研究会
日時:6月18日(土)15:30-17:35(発表①15:30-16:30、発表②16:35-17:35)
場所:西南学院大学1号館205教室
発表1:「思考力伸長を伴う英語教育と検定教科書の役割―台湾の高等学校英語教科書研究から」 平井 清子(北里大学)
〔要旨〕 グローバル社会で通用する英語力として、コミュニケーション力と並び必要とされるのが論理的思考力である。本発表は、台湾の高校英語の検定教科書を、各章ごとの「本文」に関する「質問」と「タスク」について認知負荷の高さ(Cognitive Demand)から調査・分析したものの中間報告をし、日本の検定教科書における同種の先行研究との比較分析を試みる。また、台湾と日本の高校英語教科書で、同じテーマやトピックを取り扱った章について、具体的にそこで扱われている「質問」と「タスク」の内容と構成を比較することで、思考力を伸長させるために英語認定教科書に必要なものを考察し提案する。
発表2:「形成的フィードバックが動機づけに与える影響―形成的フィードバック被経験度に関する調査―」 土屋 麻衣子(福岡工業大学)
〔要旨〕 21世紀以降の外国語学習動機づけ研究は、DornyeiのL2 motivational self systemを中心に進められてきている。このシステムは、ideal
L2 self、ought-to L2 self, learning experienceの3つの考えから構築されるものだが、これまでの研究はこの3要素の相関・因果関係を扱うものが大半で、日常の学習で経験すること(learning
experience)がどのようにideal L2 self に影響しているかはあまり注目されてこなかった。しかしながら、日頃、教室で学習者と向き合う教師としては、彼らの意欲を高めるために何らかの教育的介入を実施したいと考えるわけで、learning
experienceがどのようにideal L2 selfに影響を与えるかを探る研究は積極的にされるべきだと考える。本研究では、ideal L2
self達成のためのモチベーションを維持し高めるための教育的介入として、形成的フィードバックに注目する。日本の英語教育において、形成的フィードバックの研究はこれまであまり行われていないことから、まずは学習者が1年間の学習過程において、どのように、どの程度、形成的フィードバックの受けたと認知しているかを調べることとした。本発表ではその調査について報告をする。
第164回東アジア英語教育研究会
発表1:「就職英語試験に関する一考察」水島孝司(南九州短期大学)
〔要旨〕 就職のためだけでなく、最近は大学の英語科目の単位を取るためにTOEICを受験する学生が増えているようである。それに伴い、TOEICについてある程度の知識や指導経験を持つ大学教員も増えていると思われる。しかし、大学の出口で待ち受けているTOEIC以外の就職英語試験については、発表者を含めて多くを知らない教員がいるかもしれない。そこで本発表では、まず就職試験に用いられる主要な英語テストを概観する。次に、企業が独自に作成した一般常識としての英語試験を分析・考察する。
発表2:「大学入試改革が変われば、英語の「話す・書く」能力は本当に伸びるのかー韓国・NEATを踏まえて」」木下 正義(元福岡国際大学) 〔
〔要旨〕 今年2・3月に二度、訪韓した。一回目は原隆幸先生(鹿児島大学)と「韓国の電子教科書の実態調査」、二回目は小池生夫先生と清永克己先生(日新館中学校)と「韓国英語教育政策」の実態調査に参加して、多くの情報を得ることができた。韓国は修能試験に代替えしてNEATを採用したが、すぐに中止となった。その経緯をソウルのKICEで聴いてみた。吉田研作先生は「大学入試が変われば、日本の英語教育は変わる」(朝日新聞2016.4.8.)と明言された。確かに、「日本の英語教育の欠陥があることは、中・高校6ヶ年の英語学習を通して実用に資する英語運用能力がないことに、多くの日本人が鬱積した恨み(ルサンチマン)がある。「英語の聞く・話す」能力を如何に延ばすか、その方法は如何にあるべきか検討すべきである。」(麻生 泰氏(九経連会長)面会時の談話、於:AIビル11F、2013.11.8)2019年度より2022年度まで高校生は在学中に英語基礎学力テストの試行が実施される。2023年度より、大学入試センター試験に変わって、CBT利用の英語の4技能のテスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が実施されると聞く。年間複数回実施され、約50万人の受験生が受験、「聞く・書く」英語の評価の採点者の問題やCBT利用の場合の中央制御装置の問題等は今後の課題である。韓国のNEATの二の舞をしないことを祈りたい。今回の発表は1)NEATとKICEの役割、2)日本の高校生の英語力、3)高校英語授業の実態と大学入試、4)今後の新学習指導要領と入試について発表したい。
第163回東アジア英語教育研究会
日時: 平成28年4月16日(土)15:30-17:30
会場:西南学院大学1号館205教室
(1)田上 優子 (福岡女子大学) 「初年次英語教育におけるニュースメディアの活用について」
【要 旨】 モバイル技術の恩恵に与り、デジタルネイティヴと呼ばれる層が大学へ入学してくる時代となった。グローバルの波が寄せる今日、成熟した思考・判断力をもち自ら積極的に考え行動をおこせる自律した態度をもち合わせた成人の育成は、大学の抱える喫緊な課題といえる。 本発表では、大学初年次教育におけるウェブ上の英語ニュース(NHK配信による『ABCニュースシャワー』)を利用した15週にわたる授業の実践報告をおこなう。毎週1つのニュースを学生自らが選んで視聴をし、サマリーとコメントを付す課題を出した。授業ではヘッドセットを通したLL機能を活用し、ペアワークで互いのコメントを確認し合う作業を行った。学期末には選んだニュースの多様性やニュースから得られた知見に関して学生自らふりかえりをおこなった。世界に目を向ける教材としてのニュースメディアの視聴が自律学習に与える影響について、またニュースを授業内でコミュニカティヴに活用することの意義について考察をする。
(2)岩本弓子 (福岡大学非常勤講師) 「自主的な英語学習者への道ーオンラインニュース雑誌 Time for Kids の利用ー」
【要 旨】 短期大学部対象の「ニュースの英語」という授業の実践報告と学生へのアンケート結果を紹介ながら、平易な英語で書かれた英語ニュースを英語教材として用いれば、学生に内容に関する興味を持たせることができ、学習意欲を高めることができる例を紹介し、さらに学生自身がオンラインニュースを選んでくることによって、自主学習をうながすことができるのではないか、という可能性を示したい。英語のレベルがそれほど高くないからと言って、20歳前後の学生に、内容があまりにもその人間としての成熟度とかい離しているものを教材として取り上げることは、かえって学生の意欲をそぐことになるのではないか、問題提起したい。
(3)津田晶子 / ダルシー・デリント (中村学園大学 / 同非常勤講師) 「初年次英語教育におけるTeacher Collaborationの意義と課題」
【要 旨】 本発表では、初年次英語プログラムの実施において、(1)日本人英語教員と外国人英語教員、(1)英語教員と専門教員、(3)専任教員と非常勤教員の3つのタイプのTeacher Collaborationの重要性と、解決すべき課題を実例を挙げながら、検討する。また、Teacher Collaborationの成果として、栄養系学生による英語レシピコンテストや教材開発、共同研究について紹介する。 (4)長田 順子 (中村学園大学非常勤講師) 「日本の学生に求められる英語コミュニケーション能力とは」 【要 旨】 21世紀に入り、日本の英語教育現場にもCLTなどコミュニケーション重視の教授法が導入された。しかし、現場指導者の理解・技能不足もあり、うまく機能していないようである。発表者はそうした現状を鑑み、イギリスでの英語教授法修得経験もふまえ、英語運用能力向上の要件を考察する。