2023年度

第239回東アジア英語教育研究会


日時:3月9日(土)15:30-17:30(予定)
場所: オンライン開催
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込: https://forms.gle/3XhXLdEFNFPuj7S37

発表1:「英語教育で育てる言語力について考える―トランスランゲージングの視点から―」
蒲原順子(福岡大学非常勤)
〔要旨〕
発表では、日本人英語学習者にとっての英語学習上の問題をトランスランゲージングの視点から再考し、現状を踏まえつつ、目指すべき英語力、言語力について持論を述べる。トランスランゲージングは、バイリンガル教育の中から生まれ、二つの言語を効果的に使うことで両方の言語力を伸ばすと言われているが、これを支える概念として「ダイナミックバイリンガリズム」という概念がある。この概念は、バイリンガル、マルチリンガルの頭の中には「ひとつの言語体系one linguistic system (Garcia and Li, 2014)」があるだけである、とする考えに基づいている。発表者は、この点に注目し、この概念をモノリンガルの日本人英語学習者に当てはめて考察をする。まず、日本語を母語として育った学習者の言語的な現状を、語彙、文、文章について分析し、日本人学習者の「言語体系」には様々な外国語の要素がすでに取り込まれていることを確認する。その際、漢語や翻訳語、パラグラフの導入などを通して日本語が変容してきたことを見る。そうした上で、英語学習の上で伸ばすべき言語資質を日本語と英語の両方面で考える。

発表2:「卓球を事例とした体育CLILの実践研究」 
二五義博(山口学芸大学)
〔要旨〕
本発表の目的は、CLILの4C(内容、言語、思考、協学)の分析に基づき、体育と英語の教科横断的な授業による利点や課題を明らかにすることである。卓球(ダブルス)の内容を英語で学ぶことが、内容への動機づけ、コミュニケーション能力育成、思考や協同学習の視点でいかなる効果があるかを探りたい。研究方法としては、山口県内の高専1年生2クラス85名を対象として、CLILの4つの軸に基づく教材を作成し、授業案(90分×2回)をデザインした。具体的には、ペアワーク、作戦タイムやメインゲームの各活動で、英語のシナリオやワークシート、“Point for English”等を取り入れ、学生が体育学習をしながら、多くのオーセンティックな場面で英語使用できるよう工夫した。
アンケート調査結果、量的分析からは、CLILの4Cにおいて一定の効果が見られた。この要因としては、以前の体育CLILの実践よりも言語面の支援を充実させ、専門用語集の作成での足場かけとQ&Aで初級者のおかしやすいミスのポイントを提示したこと等が挙げられる。また、頻出語リスト、共起ネットワーク、対応分析の3つの研究手法に基づく質的分析からは、体育や英語の得意・不得意によって、利点や難しかった点に違いが見られることが分かった。

事務局
原 隆幸

第31回ESP研究会


第31回ESP研究会を下記の通り開催いたします。
多くの方にご参加いただけますと幸いです。

日時:3月16日(土) 14:00〜17:00 (予定)

会場:鹿屋体育大学
#新幹線・飛行機ご利用の場合
#鹿児島中央駅から体育大前まで「鹿屋直行バス」があります
#鹿児島中央駅11:40発→→体育大前13:25着

懇親会:18:00から懇親会を予定しています。

参加費:無料

日程・タイトル・発表者(所属):

14:00〜14:30
「英日両語による絵本の読み聞かせによる効果
The effects of the reading of picture books both in English and Japanese on elementary school children」
山内ひさ子(元長崎県立大学)

14:30-15:00
「資格取得を目指す自律学習者向けのスピーキング能力養成教材開発ー航空英語能力証明を事例としてー」
縄田義直(航空大学校)

15:00-15:30
「ESP教育における英語語彙リストの開発と評価」
山本佳代(宮崎大学)

15:40-16:10
「ICTを活用した体育大生の英語発信力育成」
吉重美紀(鹿屋体育大学)

16:10-16:40
「ICTを活用した工学英語学習支援」
安浪誠祐(熊本大学非)

16:40〜17:00 意見交換など

研究会・懇親会へご参加の方は安浪(yasunami@kumamoto-u.ac.jp)宛にご連絡ください。
 

第238回東アジア英語教育研究会

日時:1月20日(土)15:30-17:30(予定)
場所: オンライン開催
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込: https://forms.gle/FYPERh33vGSefXMB6

発表1:「ブルームのタキソノミー改訂版:アンダーソン博士のインタビュー分析と日本における実践的応用の可能性」
中西千春(国立音大学大学)、川井一枝(聖徳大学)
〔要旨〕
報告者の中西はブルームの「教育目標のタキソノミー」改訂版の翻訳を出版した(2023,中西他,東信堂)。原著のタキソノミーも,この改訂版も,教育研究関係者に知られるものの,実際に手に取って,読まれていないことでも有名である。本発表では,改訂版の編著者の一人であるローリン・アンダーソンがインタビューに答えたビデオを分析し,ブルームのタキソノミー改訂版の背景と著者の意図を探る。改訂は,教育目標分類の現代化と教育フレームワークの動的再定義のために必要であった。改訂版では,教育目標の分類を名詞から動詞へと変更し,教育や職場学習での応用範囲を拡大した。アンダーソンは,タキソノミーが単なる教育目標設定ツールではなく,教育プロセスの分析と評価のためのツールとしての役割を強調している。翻訳者の一人として,このインタビューを検討したい。
一方,報告者の川井は,大学生を対象にタキソノミー・テーブルを実践で活用し,その可能性を検証した。一般的には教員用ツールとして認識されるタキソノミー・テーブルだが,自己省察に用いることで学生用ツールとしての可能性もあると考える。
報告者らは,教育界における認知度は高いのに,なぜ日本におけるタキソノミー・テーブルの活用事例が少ないのか疑問に思っている。タキソノミー・テーブルは古くて新しい。教育が大きく転換し,探求的な学びが求められる今こそ,タキソノミー・テーブルを見直し, 教育現場に取り入れるべきではないだろうか。

発表2:「外国語教育おいて異文化理解能力をどのように育成するのか」 
原隆幸(鹿児島大学)
〔要旨〕
2000年以降、国内外の外国語教育においてヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)は瞬く間に広がり、各国・地域の外国語教育に取り込まれていった。日本ではCEFRを基に、CEFR-Jが作成された。また、グローバル人材の育成が急務となり、各国はその対応に追われてきた。グローバル人材に求められる能力の1つが異文化間能力であり、それは外国語教育で特に求められている。言語スキルに関しては、CEFRや2018年に出されたその増補版(CEFR/CV)が出され、それらを活用して能力を測ることができる。一方、(異)文化理解能力に関してはどうであろうか。どのような内容をどのように教えたらいいのか、身に付けた異文化理解能力をどのように評価するのか、などの問題がある。そこで外国語教育において異文化能力を育成するための枠組みを取り上げ、考察してみたい。

事務局
原 隆幸

第237回東アジア英語教育研究会


日時:12月9日(土)15:00-17:00(予定)
場所: 福岡工業大学A棟24教室(福岡県福岡市東区和白東3-30-1)
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込: https://forms.gle/PaP9dBbr6e2DSUHA9

情報交換会

日時:12月9(土) 18:00-20:00
場所:笑門
    福岡県福岡市博多区博多駅中央街6-2 1F
参加費:6,000円(税込み)程度を予定(コースではないので当日の状況で変更があります)
参加方法:参加希望の方は、11月30日(木)までに下記のメールアドレスにご連絡下さい。
参加申込:研究会参加申込事前登録URLより、事前登録をお願いいたします。
※情報交換会 Cancellation Policy
情報交換会の参加に関して変更がある場合には、12月6日(水)17時までに事務局の原までご連絡下さい。変更なしで当日の情報交換会をキャンセルされた場合は、後日、請求いたします。 


発表1:「Jマーカー設定に向けた試み―高校教科書『論理・表現』『英語コミュニケーション』の狙いと日本人EFL学習者の産出語彙との接点」
柏木哲也(北九州市立大学)
〔要旨〕
外国語学習と習得には母語が干渉する可能性があるが、具体的にどのような特徴が見られるのであろうか。本研究の目的は、①現時点で出版、使用されている高校の新課程英語科目「英語コミュニケーションI, II」及び「論理・表現I, II」においての狙いとは何なのか、②その中に見られる英語表現においてどのような特徴があり、産出語彙や文法において文部科学省はどのような到達目標を設定しているのか、③またこの2科目間でどのような違いがあり、④母語話者の産出語彙・文法との接点はどのへんにありそうなのかを探索的に調査することである。そのために現在発行されている教科書コーパスを分析し、今までの先行研究からわかっている日本人英語学習者が書いた英文の中に含まれる日本人独特の英語(Jマーカー)と母語話者の英語(Eマーカー)がどのように異なるのかを探索的に調査した。その結果、両方の教科書とも母語話者的産出を意識した点が垣間見え、比較的適切なものである点が多かった。詳細は、研究会で言及したい。

発表2:「グローバル人材育成を目的とする特別プログラムの意義」
佐々木有紀(佐賀大学)・新田よしみ(福岡大学)
〔要旨〕
2014年に文部科学省が「スーパーグローバル大学創生支援事業」を実施してからほぼ10年が経過した。この事業をきっかけに多くの大学でグローバル人材育成を目標とする新プログラムの設置やカリキュラムの改編が行われた。本発表では,福岡大学の「福岡大学グローバル・アクティブ・プログラム(以下G.A.P.)」(平成24年度開始)と佐賀大学の「ISAC (International Study Abroad Program)」(平成25年開始)という,ほぼ同時期に設置された2つのプログラムの変遷をたどり,グローバル人材育成プログラムが過去10年間でどのように変化したのか,またその成果はどのようなものかを検証するケース・スタディである。G.A.P.は平成25年度から令和2年度まで,1000名を超える学生を留学・海外研修に送り出したが,令和2年度末でプログラムとしては終了し,令和3年度からは「特別授業」「目的別短期集中講座」として実施されている。一方,ISACは,令和3年度にはISACから「英語学術プログラム(PAGE-Program of Academic and General English)」に,また,令和5年度には「副専攻プログラム欧米の言語文化専攻―英語コース」へと2度の名称変更を経て,現在にいたっている。二つのプログラムの比較を通して,プログラムの変化の背景や大学におけるグローバル人材育成の継続性について考察する。

事務局
原 隆幸

第236回東アジア英語教育研究会


日時:11月25日(土)15:00-17:00(予定)
場所: 西南学院大学(詳細は参加申し込み者にのみお知らせします)
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込: https://forms.gle/TQz8PEAPpqWq2Ajq9

発表1:「読解能力研究におけるMetalinguistic Awareness (M-AW)の定義の厳密化の試み」
伊藤彰浩(西南学院大学)・安藤千夏(西南学院大学大学院修了生)
〔要旨〕
本研究の目的は、昨年11月の発表において安藤・伊藤によって主張された内容を踏まえ、読解能力に関する研究において使用されるMetalinguistic Awareness(以下、M-AW)の厳密な定義を具体的に提案することである。1990年以降に刊行された読解能力を扱う学術論文において、M-AW を研究対象とする論文を選び出し、レビューの対象とした。先行研究の内容を踏まえ、これまでの読解能力研究においては、M-AWのレベル、そして、awareness の対象に関する研究者間の同意が充分に確認されていない点を指摘し、その問題を解決するために、M-AWおよびM-AWの下位部門において、どのようなレベルとawareness の対象を研究の対象とするかについて検討することが、今後の読解能力研究の発展には不可欠だと主張する。
発表者である我々は、昨年11月の本研究会で発表した文献研究の内容と今回の発表の内容を踏まえて、学術論文を刊行する予定である。読解能力研究の専門家から数多くの建設的な批判とコメントをいただく中で、研究者間の研究対象に関する同意を求めること、測定に利用するタスクの形式と内容によってのみ規定されうる M-AWのレベルを操作すること、そして、当該タスクの妥当性を担保することがいかに難しいかを知ることとなった。この問題に対して、我々はいかにして挑むべきなのだろか。今回の研究発表では論文刊行の最終段階として、これまでいただいた数多くの建設的な批判やコメントに対して可能な限り回答するとともに、現時点で発表者が考えるMetalinguistic Awareness (M-AW)の定義について具体的な提案を試みる。

発表2:「リンガフランカコアの再考-ELF環境における日本人英語学習者の発話の調査」
中山 聡(西南学院大学大学院)
〔要旨〕
Jenkins がリンガ・フランカ コア(LFC)というELF環境において、聞き手の明瞭性を妨げないための発音の指標を提示してから 20 年余りが経過した。この指標は実際の発話データからコミュニケーションに支障をきたした発音を抽出して作られたものであり、その妥当性は20年間の研究において認められつつあるようだ。しかし、この指標は、現在の日本人英語学習者の発音にも当てはまるのだろうか。仮に当てはまらない発音の特徴が発見された場合、それはどのような特徴をもち、何が原因なのだろうか。現在発表者は修士論文の執筆に向けて、日本人英語学習者の英語の発音に関する調査を実施している。当日の発表では調査結果を示し、その結果に対して具体的な考察を加える予定である。

発表3:「現代の若者が『友達』に対して抱くイメージ-個人別態度構造分析からのアプローチの試み」
郭仁敬(西南学院大学大学院)・中山聡(西南学院大学大学院)・伊藤彰浩(西南学院大学)
〔要旨〕
本研究の目的は、現代の若者が「友達」に対してどのようなイメージを抱いているのかを明らかにすることである。心理学や社会学では、1980年代後半から、若者の友人関係の希薄化もしくは選択化が進行しているとの知見が出されている。希薄化は、お互いを傷つけない表面的で円滑な関係を志向する傾向を指し、選択化とは、状況や関係に応じて異なる振る舞いをする傾向を指す概念である。今なお若者の友人関係の状況に対する一貫した見方はなされていない。しかし、友人との付き合い方に何らかの変化が見られるとするならば、若者にとっての「友達」に対する意味付けもまた変化している可能性がある。さらに、希薄化や選択化は主に大人数を対象とした統計調査を基に導き出された「傾向」であり、そのような研究手法には限界がある。本研究では、「個人」の意識やイメージに焦点を当てる個人別態度構造分析を用いることで、若者の「友人観」をより深く究明できる可能性を提案する。

事務局
原 隆幸

第235回東アジア英語教育研究会


日時:9月16日(土)14:00-17:00(予定)
場所: 福岡工業大学(予定:詳細は参加申し込み者にのみお知らせします)
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込: https://forms.gle/Q1xfNt7HGgbjcUs1A

発表1:「『話す』力を伸ばす『英語絵本の読み聞かせ』授業方法についての一考察」
山内ひさ子(元長崎県立大学)
〔要旨〕
新小・中学校学習指導要領(平成29年2月告示)により、小学校の英語活動が3年生から始まり、5年生から教科となり、令和2年から完全実施されている。それによる教育成果をはっきりと報告している論文はまだほとんど見られない。中学校の場合、3月に行われた全国学力テストでは、英語の場合、前回のテスト問題との調整はされていないが、「話す」の平均点が12.4%と、極端に劣っているという結果が出た。この結果を受け、今後「話す」に重点を置く指導が小・中学校で求められていくように危惧される。
この発表では、特に小学生の英語学習に効果があるとされる「英語絵本の読み聞かせ」のやり方の工夫により、英語を「聞く」だけでなく、英語を「話す」力を伸ばす授業方法について考察する。

発表2:「大学教育における生成AI:英語教員に求められること」 
安浪誠祐(熊本大学非常勤)
〔要旨〕
2022年11月下旬にChatGPTが公開されると、瞬く間に多くのユーザを獲得した。英語圏の教育機関は素早く反応し、教育委員会や高等教育機関からChatGPTの使用に関する方針が発表された。一方、日本では、2023年3月下旬になって初めて大学から教員向けのガイドラインが示された。これまでに、数多くの大学が学生向けの生成AIに対する考え方を示している。文部科学省は、5月中旬に中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会を設置し、7月上旬には「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン(通知)」を、そして同月中旬には「大学・高専における生成AIの教学面の取り扱いについて(周知)」を発表した。大学では、生成AIに関する留意事項は示されているが、授業内での利活用については、授業担当教員の指示に従うこととされている。本発表では、生成AIの可能性や課題に焦点を当てつつ、生成AIの使用権限を与えられた英語教員に求められることについて考察したい。

発表3:「英語の表現力を身につけることの大切さについての研究―機内安全ビデオを題材として―」 
清永克己(至誠館大学)
〔要旨〕
飛行機を利用する時、客室乗務員は離陸前に搭乗者に対し、デモンストレーションあるいは機内安全ビデオで安全情報を周知させなければならない。その内容は、日本では「運航規程審査要領細則」で、アメリカ合衆国では”Code of Federal Aviation Regulations(連邦航空規則)”で述べられている。シートベルトの使用方法、ライフベストや酸素マスクの配置場所、着用方法及び使用方法など周知させる内容は世界各国の航空会社で共通している。本研究では、日本の航空会社2社と海外の航空会社4社の機内安全ビデオを比較材料とした。英文のReadabilityを調べたところ、11歳から14歳レベルでほとんどの人が理解できるような比較的優しい表現が使われていて、難しい修辞法は使われていなかった。同じ事柄の説明でも、命令文を使っていたり、または行動を促す表現を使ったりと各航空会社で表現の方法が違っており、身近なところに学びがあることが分かった。

事務局
原 隆幸

第234回東アジア英語教育研究会(JACET東アジア英語教育研究会・言語政策研究会・海外の外国語教育研究会との共催研究会)


日時: 7月15日(土)14:30-17:45(予定)
場所: オンライン開催
参加費: なし
参加方法: 参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込URL: https://forms.gle/WqvVxGirYeyCSFNv7

~プログラム~
テーマ: 基礎から対話型AI(生成AI)まで―言語・教育の現状と課題

14:30-14::35 開会挨拶:石井和人・原隆幸

14:35-14:40 SIG代表挨拶とSIG紹介1(海外の外国語教育研究会): 大場智美 代表
14:40-15:25 SIG発表1(海外の外国語教育研究会):
        「Discourse-Historical Approach(談話歴史的手法)による日本の英語教育政
策分析と教育現場が抱える問題点」 大場智美(多摩大学)

15:25-15:30 SIG代表挨拶とSIG紹介2(言語政策研究会): 杉野俊子 代表
15:30-16:20 SIG発表2(言語政策研究会):
      ①「言語政策の視点から論じる生成AIの活用と英語教育」
波多野一真(創価大学)
②「言語教育政策の視点から考えるドイツ語の授業の現状と課題言語教育政策
の視点から考えるドイツ語の授業の現状と課題」 山川智子(文教大学)

16:20-16:25 SIG代表挨拶とSIG紹介3(東アジア英語教育研究会): 石井和仁 代表
16:25-17:10 SIG発表3(東アジア英語教育研究会):
「生成AIの登場で研究や教育の現場がどのように変わるのか」
 石井和仁(福岡大学)

17:10-17:40 全体意見交換:杉野俊子

17:40-17:45 まとめ:大場智美


SIG発表1:「Discourse-Historical Approach(談話歴史的手法)にSIG発表1:「Discourse-Historical Approach(談話歴史的手法)による日本の英語教育政策
分析と教育現場が抱える問題点」 
大場智美(多摩大学)
〔要旨〕
教育政策と現場のギャップを明らかにするために、 2011年に文部科学省がとりまとめた「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策」をWodak & Meyer (2001)が提唱する談話歴史的手法で分析した。その一方で、教員養成実践者などからの聞き取り調査により、日本の英語教育の問題点(政府と教育現場が描く「グローバル人材」の違い、行政と教育現場間の不信感、大学受験、教育予算、文化や言語の違い、教育環境と教員養成課程)が解明され、これらの問題解決に向けて教員養成者がなすべき課題を明らかにした。

SIG発表2:①「言語政策の視点から論じる生成AIの活用と英語教育」
波多野一真(創価大学)
〔要旨〕
本発表では、文章の自動翻訳・生成を可能にする生成AIが英語教育に与える影響について考え、そこから生じる様々な教育上・言語政策上の変化について論じる。ChatGPTをはじめとする生成AIを活用することで、我々は英文作成などの高度な認知活動において飛躍的な効率性を手に入れることができる。そうした状況の中、伝統的な英語教育の目的や手法が時代に即したものであるかどうかを検証することが重要であり、それは教員個人の意識の問題にとどまらず、教育の方向性を決める言語政策の問題として考える必要がある。生成AI活用の恩恵を享受しながら、発展的に英語教育が変化する道を模索する。

SIG発表2:②「言語教育政策の視点から考えるドイツ語の授業の現状と課題言語教育政策の視点から考えるドイツ語の授業の現状と課題」 
山川智子(文教大学)
〔要旨〕
本発表では、日本におけるドイツ語教育について、学習目的、学習者の姿勢、および学習方法が変容しつつある現代の言語教育の文脈において考える。ドイツ語の国際的な位置づけも変化し、日本でのドイツ語普及には課題も多いとされる。また、個々の学習者のニーズが多様化し、授業への期待もまちまちである。学習者の動機づけを高めるために、授業ではどのような工夫が必要なのか。学習者の生い立ちや学習歴も多様化した現代において、学習者の視点に立った学習方法も活用することが求められるだろう。さらに、知識を吸収するだけでなく、適切に発信する能力を育むことも重要であろう。参加者の皆さんと情報交換・情報共有の場としたい。

SIG発表3:「生成AIの登場で研究や教育の現場がどのように変わるのか」
 石井和仁(福岡大学)
〔要旨〕
2022年11月にアメリカでオープンAI社のChat GPTが登場して以来、その利用者が学生から社会人にいたるまで幅広い階層で急速な広がりを見せている。
日本での動きはアメリカに比べるとまだタイムラグが見られるようだが、利用者の要望に応じた文章や画像の作成、情報の処理やアイデアの提示などを瞬く間に行う創造性に満ちた能力に、皆、驚きとともに大きな魅力を感じている。しかし、その一方で著作権をめぐる問題などの懸念材料も取りあげられ、生成AIは諸刃の剣的要素を含んでいると言える。
欧米では、この生成AIに対してわが国よりも強い警戒感を示しているが、IT化において他の先進国に遅れをとるわが国は、生成AIを積極的に利用してIT先進国の仲間入りを果たしたいと考えている。こういった生成AIの負の部分よりも正の部分に注目して成果をあげようとする傾向は教育の分野においても同様で、考えられる様々なリスクを回避しつつ、いかに教育効果をあげるかが今まさに教育現場に求められていることと言えそうである。そのため、今年の3月ごろから、一部の国立大学を始めとして、複数の大学が学内における生成AIとの向き合い方に関する指針を示し、教育現場での効果的利用法を模索し始めている。われわれは、このような革新的技術を目の前にして、その便利さに盲目的に流されることのない「健全な」学習者を育成することがどこまで可能なのか、また、どのようにすればそれが可能なのか、知恵を出し合い議論することが必要であろう。また、教育者としてだけでなく、研究者としてもわれわれの注意すべき点は少なくないと思われる。議論を通しての新たな気づきに期待したい。


事務局
原 隆幸

第233回東アジア英語教育研究会

日時:5月20日(土)15:30-17:30(予定)
場所: オンライン開催
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込:https://forms.gle/PXxmc1PHWe5FiKcSA

発表1:「医療従事者養成大学における医療英語教育~医療通訳養成を元に考える」
西原玲奈(中村学園大学非常勤)
〔要旨〕
医療従事者は養成校を卒業後、即戦力としての活躍が期待される。日本国内では医療通訳を配置している病院は数が限られており、多くの病院では英語が得意な内部の者か、外部のNPOや電話通訳で他言語話者とコミュニケーションをとっているのが現状である。現在、国際臨床医学会(ICM)認定医療通訳士となるには、医療機関での通訳キャリアを元に実務認定を受ける他に、厚生労働省発表医療通訳育成カリキュラムに沿った研修を履修し、試験を受ける方法がある。2レベル設定されている場合、上位の試験受験には75時間の研修が必要である。一方、大学で英語を教える時間は限られている。
発表者が医療通訳試験受験資格講座で実技を教えている医療通訳学校(日本医療通訳アカデミー:東京)と医療英会話を教えている栄養士養成大学(中村学園大学)でアンケートを実施し、限られた時間ながら、学生時代に学んでおくと後々、現場で役立つであろう内容を検討した。医療通訳学校では現場対応能力を付けるために、調べ物やメモ取りの仕方なども訓練するが、大学一年生には診察室での会話台本を用いたロールプレイが目標設定になり、背景知識や基本表現を習得できるため適していると考えられる。

発表2:「西方見聞録:欧州の多言語主義について―スペインのバスク地方を中心に」 
志水俊広(九州大学)
〔要旨〕
所属先のサバティカルを利用して2022年10月半ばから2023年3月半ばまで約5か月間スペインのバスク自治州のサン・セバスチャン(バスク語名ドノスティア)に拠点を置き、スペインおよびフランスのバスク地方とポルトガルの多言語主義について研究・視察してきた。従来バスク地方はバスク語とスペイン語、あるいはバスク語とフランス語のバイリンガル(2言語併用)地域だと紹介されてきたが、バスク地方のみならず欧州(EU域内)は今やmultilingualism(多言語主義)が主流である。現地の多言語主義の実情と成果および問題点を報告し、日本における多言語主義の可能性にも言及したい。

事務局
原 隆幸

第232回東アジア英語教育研究会


日時:4月22日(土)15:30-17:30(予定)
場所: オンライン開催
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込: https://forms.gle/stV8fJJx5NpXVr2N7

発表1:「科研費プロジェクト:生涯教育としての食育英語を考える―多文化共生社会の視点から―」津田晶子(中村学園大学)・早瀬沙織(宮﨑大学)・仁後亮介(中村学園大学短期大学部)
〔要旨〕
日本の小学校、中学校の学校給食制度は、地産地消を取り入れ、給食を通じて「食育」を学ばせる場として世界的に注目されている。(黒谷 佳代, 新杉 知沙, 三好 美紀, 瀧本 秀美,:食育の推進のこれまで, 栄養学雑誌, 78, 50-59, 2020.)
しかしながら、高校、大学になると、給食制度の恩恵を受けることがなくなり、生徒・学生への食育は、継続的には行われていない。
この科研費プロジェクトでは、地域に外国人居住者が増え、食の多様化に対応が迫られる中、英語教員と栄養学教員・調理学教員が協業し、英語教育と食育を融合させて、小中高大連携の視点から「食育英語プログラム」を開発することを目標としている。
本発表では、津田(英語教員)の視点から、本プロジェクトの全体の調査計画、早瀬(英語教員)の視点から、英語教科書における食育に関する内容の概要、仁後(調理教員)の視点から、栄養教諭・家庭科教諭を対象とした現場の異文化コミュニケーションの実態についてのインタビュー内容、また今後新たに取り組む九州・沖縄のフィールドワークと郷土料理の日英動画の開発の概要について、報告する。

発表2:「アンガーマネンジメントをCLIL教材として活用する可能性について—翻訳本を通して」 
古村由美子(名古屋外国語大学)
〔要旨〕
本発表では、スーザン・フィッチェル著“Transforming Anger to Personal Power”を
CLIL教材として活用する可能性について述べる。本書は、自分のネガティブな感情に振り回され友人関係や親子関係に悩む子供たち向けの題材を使用しているが、アンガーマネジメントの基本的な方法が書かれているため、年代を問わず使用できる。もし、この本をCLIL教材として大学で使用するとすれば、ロールプレイを含む英語でのやり取りなどを通じて英語力向上を図ると共に、今後の人生にも有益な感情コントロールについても学ぶことができる。2023年2月に出版した本書の翻訳書「アンガーマネジメント・レッスン―怒りの感情を自分の力に変えよう」を利用して内容への理解を深めることができるため、本発表ではアンガーマネジメントの概略とその有効性について説明する。

発表3:「English Language Education at Ukrainian Schools and Universities」 Oksana Ukrainets(九州大学留学生)
〔要旨〕
Over the past few decades, there has been a significant rise in the need for better English language proficiency in Ukraine. This is because people want to interact, exchange ideas, and gain knowledge from the rest of the world. This has involved the government, educators, and the public, and in 2016, Ukraine designated it as the “Year of English” to emphasize the importance of the language.
English has become an essential life skill in the 21st century, comparable to computer literacy, rather than just a specialized skill. It allows people to access a broader range of information and perspectives beyond their native language. Ukrainian schools, teachers, and language courses have made a considerable and enduring impact on the teaching and learning of English in schools and universities across the country. This will lead to an improvement in overall English proficiency among the population and ultimately contribute to Ukraine's economic growth, adaptability, and global connections.
I am happy that Ukraine has a diverse choice of methods to teach languages, with some of them being focused on a quick and effective language acquisition, while others pay more attention to learning language from interesting and admirable materials through extensive listening and reading. That is what I plan to present during the meeting on the 22nd of April: language schools, peculiarities of language teaching styles, the overall attitude towards language acquisition processes in Ukraine and several other languages-learning related topics.

事務局
原 隆幸