2022年度

第30回ESP研究会

第30回ESP研究会を下記の通り開催いたします。

多くの方にご参加いただけますと幸いです。

日時:3月18日(土) 13:00〜17:00(予定)

場所:熊本城ホール小会議室F1&2
   https://www.kumamoto-jo-hall.jp/

参加費:無料

日程・タイトル・発表者(所属):

13:00〜13:05 会場準備

13:05〜13:50
「ESPにおける学習者研究」
荒木瑞夫(近畿大学)

13:50〜14:35
「航空英語リスニング試験における妥当性の検証」
縄田義直(航空大学校)

14:35〜15:20
「ESPにおける英語の発信力ー体育大生のICTを活用した発表から」
吉重美紀(鹿屋体育大学)

15:20〜16:05
「小学校英語活動における日英両語による自作絵本の読み聞かせ授業の報告」
山内ひさ子(元長崎県立大学)

16:05〜16:50
「ChatGPTが英語教育・英語学習に与えるインパクトー英語教師はどのように対応すべきか」
安浪誠祐(熊本大学・福岡大学非常勤)

16:50〜17:00 意見交換など

インターネット:無線LAN利用可

ご参加予定の方は安浪( yasunami@kumamoto-u.ac.jp )宛にご連絡ください。
 

第231回東アジア英語教育研究会

日時:3月18日(土)15:30-17:30(予定)
場所:西南学院大学(会場の詳細は参加者にのみお知らせします)
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
※会場が大きくないため人数制限をいたします。
参加申込: https://forms.gle/oScwh2K2Za6NSu5Z7

全体テーマ
「これからの英語指導を考える-『意味順』の活用を視野に入れて」

発表1:「『意味順』発展史-理論的・実践的意義の再考と今後の展望」
田地野彰(名古屋外国語大学)・金丸敏幸(京都大学)・加藤由崇(中部大学)
〔要旨〕
本発表の目的は、「意味順」が新書判として世に出た1995年以降の発展史を振り返ることで、その理論的・実践的意義を問い直し、今後の展望を示すことにある。これまで出版されてきた意味順関連の書籍や論文、教材等を年表形式で概観しながら、語順・文構造に焦点をおいた「ヨコ軸」に加えて文法指導を体系化する「タテ軸」の機能を実装させてきた背景を確認するとともに、その理論的基盤が応用言語学および関連諸分野の多様な観点から議論される一方、さまざまな校種での先進的な実践事例の蓄積が進む現状を示す。そのうえで、今後は学際的な研究に加えて、カリキュラム・レベルでの長期的な実践者研究やそれを視野に入れた教材開発が意味順のさらなる可能性を拓くことを論じる。

発表2:「日本の学校英文法と欧米の文法書の温度差-『意味順』からみた再分析」 
川原功司(名古屋外国語大学)
〔要旨〕
本発表の目的は、「意味順」を使用することで基本的な述部の構造パタン(5文型、7文型どちらでも)が網羅できるだけではなく、日本の学校英文法が抱える齟齬を無理なく解決することができるということを欧米の英文法書との違いにも言及しながら比較検討する。特に、補部と付加部という概念を含む統辞論における句構造の理論、およびそれを取り入れたHuddleston and Pullum (2002)とAarts (2011)と「意味順」の相性の良さと副詞的目的格につきまとう品詞・語彙範疇間の混乱が無理なく解決できるということを理論言語学の観点から分析する。

発表3:「『意味順』と英語史の接点を探して―there接触節に焦点をあてて」 
高橋佑宜(名古屋外国語大学)
〔要旨〕
本発表の目的は、現代英語に関する文法の枠組みという点において共時的である意味順を通時的な視点からも考察することである。まず、英語における語順の史的変化を意味順の枠組みで整理しながら概観する。その上で、there接触節を事例として取り上げ、共時的・通時的な視点から分析を行う。共時的には、主格の関係代名詞の省略として説明されることが多い。一方で、通時的には、並列構文から発達したことやthere’sの文法化が指摘されている(中澤 2006; Yaguchi 2017)。2つの視点を意味順の枠組みで分析することで、意味順と英語史の接点を探りたい。

発表4:「『意味順』で育った中1生のあれからとこれから」
藤木克哉(久留米大学附設高等学校中学校)
〔要旨〕
明日の授業に活かす「意味順」英語指導 理論的背景と授業実践』(通称:「意味順赤の書」)で中1指導の実践例としてご紹介した生徒たちも、いよいよこの春から高3になります。彼ら彼女らは私が初期指導から意味順を導入した初めての生徒たちです。本発表ではこれまで5年間の授業の様子や生徒たちのライティング作品を共有しながら、生徒たちのその後と生の声、さらには子どもたちの今後についても展望できればと考えています。

発表5:「英詩の効用-外国語教育としての英語指導」
桂山康司(京都大学)
〔要旨〕
本発表の目的は、大学教員ばかりではなく、英語教育全般において、詩の活用が日本人向けの教養教育の現場において、有効であるとの認識を共有することにある。(ここに言う詩とは、単に詩作品として認定されているものに限らず、詩的特質を持つ表現全般を意味する。)英語が不得意な、自信のない学生―例えば、大学教養課程の再履修クラス―にこそ、英詩を活用した教育法は効果を発揮することを実際の教材の具体的な活用の事例に言及しながら、教材としての英詩の有用性を論じる。


事務局
原 隆幸

第230回東アジア英語教育研究会

日時:1月21日(土)15:30-17:30(予定)
場所:オンライン開催
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込: https://forms.gle/112hnUK91REByyxu5

発表1:「音楽大学における国際性向上を目的としたワークショップの実施」 中西千春(国立音楽大学)・川井一枝(宮城大学)
〔要旨〕
本研究の目的は,音大生の国際的志向性の特徴と変化を探ることである。音楽大学で国際性向上を目指したワークショップを実施し,前後の変化を検証した。分析対象者は2年生の必修英語を履修する42名である。1セメスターの英語授業に5回のワークショップを取り入れた。初回の授業では,国際性が何であるかを漠然としかわかっていない者が多かったが,ワークショップ時に,外国人とコミュニケーションする想定を繰り返すことによって,態度が柔軟になり,国際性に対する理解が深まったようだ。Yashima (2009)が開発した国際的志向性に関する質問紙を活用して調査を実施し,記述統計で分析したところ,ほぼすべての項目において平均点が上昇していた。

発表2:「中学校英語教科書4社におけるコーパス分析:縦断的比較と横断的比較による考察」 
柏木哲也(北九州市立大学)
〔要旨〕
本発表は、現在中学校で使用されている英語教科書の横断的比較と旧教育課程の下で使用された平成28年度に使用された英語教科書の縦断的比較についてのものである。発行部数の多い光村図書出版、東京書籍、三省堂、開隆堂出版の4社の中学校用教科書の比較を、量的コーパス分析と文法、語法使用の比較を中心に行った。具体的方法としては、統計値による複雑さの分析(S.TTR、一文語 数、T-unit値、一語の長さ、テキスト全長)及びCLAWSを用いて語彙・文法項目の出現頻度率、並びに不定詞の使用状況の調査を行った。
その結果、教科書出版社間での大きな相違点はみられなかったものの、調査項目の使用頻度(率)の違いから、教科書作成の基本理念に少なからぬ相違があることが示唆された。また、新教育課程下の教科書では、仮定法、5文型を伴った名詞節などの新出事項も現れ、大幅に語彙数と語彙難度が上昇し、文も複雑になった。その他に教科書作成の裏側とも言える文部科学省が教科書作成と検定に関してのいくつかの態度を示していることも併せて述べたい。

発表3:「機械学習データを利用したサマリー・ライティングの授業実践: AIとの対抗と共存の均衡をめざす英語教員の第一歩」 筒井 英一郎(北九州市立大学)
〔要旨〕
昨今、ウェブ・コンテンツのAI活用が進み、自動的に翻訳・要約・文の書き換えが瞬時に行えるツールが身近に使えるようになってきている。しかし,闇雲な使用を許すと考えない学習者を増やすことにもつながるため、思考・判断・表現力の涵養を目指す英語教員にとっては頭の痛い問題である。その反面、教員側も機械学習データを利用した教育活動もしやすくなってきていることも事実である。
そこで、Tsutsui, et al(2022)は、①文結合方法に関して,日英語における状態把握の違いであるperson-focus(人物中心)かsituation-focus(場面中心)か(Hinds, 1986)、②要約文の長さ(Oshima and Hogue, 2005)が適切か、③発表語彙レベル(Laufer and Nation, 1995)が調整(mediation: North and Piccardo, 2016)されているか、④コピー(模倣)の度合い(Keck, 2014),といった点を即時に計算し、診断的フィードバックを行うウェブアプリを開発した。さらなる機能として、スペルチェッカーとオーラル・サマリー入力を追加した(筒井・永橋・西村・大和田, 2022)。
本研究では、サマリー・パラグラフならびに文結合課題に関して、剽窃行為に気づきを促す意図として、課題提出前に本ウェブアプリを使用させた実践を報告する。まず、学生たちのコピーの度合いが減り、5語以上の連続語をそのままコピーすることが減ることが分かった。また、同意の得られた225人の各数値指標の平均点と標準偏差を算出することで5段階による即時評価診断が可能となった。さらに、分析を進めることで、外部テスト得点ならびに教員によるルーブリック評価と相関傾向がある、別の指標がいくつか明らかになった。すなわち、発表語彙の多様さ(MTLD: McCarthy and Jarvis, 2010)、センチメント分析を援用したトーン(語調)、エラー数といった指標が、即時フィードバックに追加され、現在利用可能となっている。

事務局
原 隆幸

第229回東アジア英語教育研究会


日時:11月19日(土)15:30-17:30(予定)

場所:西南学院大学 東キャンパス 大学院棟4階 406/407教室

https://www.seinan-gu.ac.jp/introduction/facility/campusmap.html

参加費:なし

参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。

参加申込: https://forms.gle/1BnSFa4g2fB4dPkHA

発表1:「Metalinguistic awareness再考: awarenessのレベルとスコープへの同意に着目して」

安藤千夏(西南学院大学大学院)・伊藤彰浩(西南学院大学)

〔要旨〕

本研究の目的は、読解能力に関する研究において使用される用語のひとつである"Metalinguistic awareness"の曖昧な定義に対して批判を加え、合理的な定義に関する提案を行うことである。ProQuestに登録されている学術論文(1990年以降)の中から"metalinguistic awareness"という用語を本文中に含む論文を抽出し、被引用件数、雑誌のインパクトファクターをもとに8本の論文を研究対象とした。Pratt & Grieve (1984)が指摘する「用語が持つスコープへの同意」と、Schmidt(1990)が the Noticing Hypothesis において主張する、(1) "consciousness"の多種性と (2) 3段階の"awareness"、という2つの視点から、各論文における "Metalinguistic awareness"の定義やスコープとしている下位領域、想定している「意識」の種類、「気づき」のレベルについて分析を行った。その結果、"Metalinguistic awareness"の下位領域である形態、統語、音韻、表記の測定方法および読解能力との相関は論文間で異なっていた。その理由はスコープへの同意の欠如に起因することが示唆された。さらに、選択した8本の論文中、6本の論文において、"Metalinguistic awareness"が示す「意識」の種類は"consciousness as awareness"であり、その"awareness"のレベルは、最も深い"understanding"であることが判明した。以上の結果から、今後の読解能力研究では"Metalinguistic awareness"が下位領域に含むべきものは形態、統語、表記に限定すべきであり、その定義においては「理解としての意識」を加えるべきである。

発表2:「『エモい』は現代版『あはれ』なのか―個人別態度構造分析を用いた検証の試み―」

中山 聡(西南学院大学大学院)、山上英絵(西南学院大学大学院)、安藤千夏(西南学院大学大学院)、伊藤彰浩(西南学院大学)

〔要旨〕

本研究の目的は、様々な場面において使用される「エモい」という若者言葉が、個人の中でどのようなイメージで構成されているかを分析することである。個人別態度構造分析(PAC分析)を用いて「エモい」が古語「あはれ」と共通性を持つとする仮説の妥当性検証を試みた。私立大学に通う2名(男女1名ずつ)の学生に「エモい」という言葉から想起されるモノやコトを自由想起するよう促した。次に自由想

起されたキーワードの関係性を被験者に評価してもらい、そのデータをクラスター分析にかけた。そして、被験者へのインタビューによりデンドログラムの解釈を行い、個人の「エモい」に対する心的態度を明らかにした。その結果、「エモい」は「郷愁」「悲哀」「優美」という3つの中心的なイメージによって構成されており、その中でも「郷愁」は最も優勢であり、その次に「悲哀」、「優美」の順であることが示唆された。平安和歌において「あはれ」であると詠まれた対象と「エモい」と形容される対象を比較すると、両者は類似した傾向を示すことが明らかとなった。これらに結果から「エモい」と「あはれ」が高い類似性を持つ可能性が指摘できた。本研究の結果から、日本人の美的価値観は昔から変わらずに存在しており、「エモい」を用いて何かを表現する我々は、流行りの若者言葉を用いる現代人であると同時に「あはれ」の美を詠む「歌人」でもあると結論づけた。

事務局

原 隆幸

第228回東アジア英語教育研究会



日時:9月17日(土)15:30-17:35(予定)
場所:オンライン開催
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込https://forms.gle/c1t8YGki96fXZgcX7

発表1:「多肢選択問題に関する研究―4択問題と3択問題試験の比較―」 清永克己(至誠館大学)
〔要旨〕
試験問題では4択問題と3択問題など、多肢選択使った問題が出題される。本研究では英検3級から準1級までの問題から各10問ずつを使い比較研究を行った。各級毎での平均点は1点程度であり、大きな差は見られなかった。正解が1つに設定されている場合、錯乱肢が3つあるいは2つ作られることになるが、勘で答えた場合でも、単純にその確率から4択問題での正答率は25%、3択問題は33.3%で、その差は8%である。10問中1点というのはその許容範囲に当たると考えられた。しかし、英検の合格ライン70%で両者を比較したとき、4択問題よりも3択問題の方が合格予想ラインに入る人数が多くなった。4択問題と3択問題での平均点はわずかであるものの、やはり1語増えた錯誤肢の影響は極めて大きいということが分かった。4択問題と3択問題を作成する時、被験者がしっかりとした理解、実力がなければ解答を絞れなくなるように、出題者は、それぞれの選択肢の関連性に注意し、はっきりとした指針を持って問題作成することが大切である。

発表2:「ライティング指導と機械翻訳」 福永 淳(九州工業大学)
〔要旨〕
近年、Google TranslateやDeepLなどの無料機械翻訳アプリケーションの翻訳精度は、格段に向上している。それに呼応して、日本語の原稿を機械翻訳アプリケーションで英語に訳出したように見受けられる学生の課題が増えている、という指摘が少なくないことから(Mori, Johnston, & Satake, 2016, 小田, 2021)、機械翻訳は英語学習者の間に広く浸透していると考えられる。機械翻訳は間違いを減らし、語彙表現や文構造を多彩にしてくれる利点がある。しかし、日本語と英語の言語構造の違いのため機械翻訳で処理できない部分があることを知らずに、学習者が機械翻訳の誤った訳出をそのまま使ってしまっていることは少なくない。使い方を誤ると、学習者の学びを疎外したり、学術的な不正行為に関わる問題となったりする可能性もある。学習者には、学術研究倫理に則った効果的な機械翻訳の使い方を指導することが望まれる。本発表では、機械翻訳とライティング指導について、日本語で書かれた文献を中心に、明らかにされた知見と議論をレビューし、学習者が既に日常的に機械翻訳を使用していることを前提としたライティング指導のあり方について考察する。


事務局
原 隆幸

第227回東アジア英語教育研究会

(JACET東アジア英語教育研究会・言語政策研究会との共催研究会)

日時: 7月23日(土)15:00-18:00(予定)
場所: オンライン開催
参加費: なし
参加方法: 参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込URL: https://forms.gle/pxRhGvA5jNKRrqsF9

~プログラム~

総合司会:原隆幸(東アジア英語教育研究会事務局・言語政策研究会副代表)

15:00-15:30 話題提供1(言語政策SIG):
      「英語教育プログラムと国語教育の均衡―南アジアの多言語構造を記録する」 
須永恵美子(東京大学)、野沢恵美子(中央大学)
15:30-16:10 話題提供2(言語政策SIG):
       「小学校英語教育における『指導者』の実情と課題」
蒲原順子(福岡大学)、祁答院惠古(法政大学)、高野のぞみ(青山学院大学)
16:10-16:20 両SIGの代表者(杉野俊子代表・石井和仁代表)挨拶
16:20-16:50 話題提供3(東アジア英語教育SIG): 
「英語教育政策研究:高校の現場から」
福永 淳(九州工業大学)
16:50-17:20 話題提供4(東アジア英語教育SIG)
「外国語教育における異文化間能力育成の枠組みを考える」
原 隆幸(鹿児島大学)
17:20-17:55 Breakout room session(話題提供1~4に分かれて意見交換)
17:55-18:00 まとめ:原隆幸


話題提供1:「英語教育プログラムと国語教育の均衡―南アジアの多言語構造を記録する」 
須永恵美子(東京大学)、野沢恵美子(中央大学)
〔要旨〕
多言語社会であり、被植民地の経験から英語の存在の大きい南アジアでは、学校で使用される言語もまた、地域言語から公用語、英語まで多様である。言語が進学や就業を左右し格差を広げる一方で、時には人々のエンパワーメントの源ともなり得る中、高まる英語教育熱の傍らで、国語教育が行き渡らないねじれも起きている。パキスタンの事例を中心に、新刊『教育からみる南アジア社会―交錯する機会と苦悩』(玉川大学出版)を紹介する。

話題提供2: 「小学校英語教育における『指導者』の実情と課題」 
蒲原順子(福岡大学)、祁答院惠古(法政大学)、高野のぞみ(青山学院大学)
〔要旨〕
発表では、日本における小学校英語教育が抱えている多くの課題の中から「指導者」の問題を取り上げる。小学校英語教育の指導者は担任、専科、その他(担任以外の教員や非常勤講師など)と補佐としてのALTであるが、単独で教える場合も含め、実に様々な形態の指導がなされている(担任、専科、ALT、専科+担任、担任+ALT, 専科+ALT、など)。文科省による公立小学校18862校を対象とした令和3年の調査によれば、担任が教える割合が67%(令和元年は80.5%)、専科が教える授業が22%(令和元年は約11%)であり、専科の教員が増える傾向にある。そして、同じく文科省の調査(令和3年)によればALTの数は約13000人でALTの外国語活動、英語の授業における活用率は中学年で68%、高学年で61%である。つまり、公立小学校では、全体の半数以上の授業でALTとティーム・ティーチングを行っている。発表では、ALTと一言も話さない日本人教師、自分一人で授業をした方がうまくいくと考える日本人教師/ALT、中学校英語と同じような授業をする日本人教師、などの現場の例を紹介する。また、教職課程(小学校)にいる学生への聞き取りを通して、英語教育に対する彼らの意識を分析する。数字からだけでは見えない小学校英語の実情と課題を取り上げ議論したい。

話題提供3: 「英語教育政策研究:高校の現場から」 福永 淳(九州工業大学)
〔要旨〕
大学入試への民間英語試験の導入の中止や2022年度から年次進行で 施行されている新学習指導要領など様々な英語教育の改革や変化に翻弄されてきた高校英語教育の現場の実践について話題を提供する。現在進めている研究プロジェクトのフィールドワークで得られたデータから見えてくる(1)高校現場の実際と(2)教育の格差を話題とし、(3)言語教育政策研究のこれからについて参加者の皆さんと考える。

話題提供4: 「外国語教育における異文化間能力育成の枠組みを考える」 原 隆幸(鹿児島大学)
〔要旨〕
2000年以降、国内外の外国語教育においてヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)は瞬く間に広がり、各国・地域の外国語教育に取り込まれていった。また、グローバル人材の育成が急務となり、各国はその対応に追われてきた。グローバル人材に求められる能力の1つが異文化間能力であり、それは外国語教育で特に求められている。そこで異文化能力を育成するための枠組みとしていくつかを取り上げ、議論してみたい。

事務局

第226回東アジア英語教育研究会



日時:5月21日(土)15:30-17:35(予定)
場所:オンライン開催
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込URL:https://forms.gle/PtuBFPpjSyhZFSq79

発表1:「実践短期留学制度ALEXと国際人育成への取組」 桂 次郎(株式会社ジャイロスコープ)
〔要旨〕
ジャイロスコープでは、創業以来、楽しさを追求した英語体験や英語キャンプを次々と展開し、英語に対する既成概念を変え、国際志向の若者の育成に取り組んできた。弊社ではこれら国内での活動に加え、本年7月より、実践活動型短期留学制度ALEXによる米国での活動を開始する。ALEXでは、国際志向の高校生、大学生を米国ロードアイランド州に受け入れ、様々なNPOでのボランティア活動や独自の調査活動に従事して頂く。このプログラムの特長は、①プログラムのすべてが実践活動であること、②出発前に参加者の実践英語力と国際常識を鍛えること、の二つである。ALEXにより英語圏社会を肌感覚で知った若者が増え、更なる国際キャリアに就くことにより、地盤沈下を続ける日本の国際競争力に歯止めをかけたい。
本発表では、7月に発進するALEX制度の狙いと内容、その先のビジョンにつき報告する。

発表2:「欧米のリーダーはどのような英語で交渉を行い、人々を説得しているのか:世界最大のディベート組織オックスフォード・ユニオンからの示唆」 中谷安男(法政大学)
〔要旨〕
英語ディベートのトレーニングが、なぜグローバルなリーダーを輩出するのに大切なのか皆様と考えていきたいと思います。
ディベートは旧英国植民地を中心としたコモンウェルス54か国、及び米国ではリーダー養成に必須だと考えられています。毎年、世界大学ディベート選手権が開かれ50以上の国から大学生が集い切磋琢磨しています。
オックスフォード大学は過去7年,世界大学ランキング1位で、ノーベル賞受賞者47名,英国首相28名,また世界のビジネスリーダーも輩出しています。しかしその源のディベート組織オックスフォード・ユニオン(Oxford Union: OU)に関する報告は多くありません。今回は2019-20年のOUの活動から具体的なリーダーのコミュニケーション戦略を確認します。 
特に以下の世界的ビジネスリーダーのコーパスデータを活用します。コーラCEO クインシー、カルバン・クライン、LVMH会長アーノルト。これに加え,TED Talkで講演したAMAZONベゾス等100名のビジネスリーダーのデータも活用します。
彼らの発話データをコンコーダンサーAntConcで分析し、どのような英語で交渉を行い、人々を説得しているのか考察していきます。 

事務局
原 隆幸

第225回東アジア英語教育研究会



日時:4月16日(土)15:30-17:35(予定)
場所:オンライン開催
参加費:なし
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込URL:https://forms.gle/kcLfRC29e5W2igz48

発表1:「日本の栄養士養成課程における英語教育:コロナ禍のオンライン学習の現状と課題」  津田晶子(中村学園大学) 
〔要旨〕
2005年に食育基本法が制定され、基本的施策の一つに「食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び国際交流の推進」がある。また、政府の食育推進会議が2021年3月に決定した「第四次食育推進基本計画」では本計画では、①生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進②持続可能な食を支える食育の推進③「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進 に重点をおいた取組が求められている。 多文化共生社会を目指す日本の食育リーダーを育成するために、管理栄養士養成校の学生が英語を通じて、フードダイバーシティーや世界の食文化を学ぶことが重要である。本発表では、管理栄養士養成校における英語のニーズ分析と、和食と栄養学を中心とした「実用栄養英語A」、世界の食文化とレシピ読解を中心とした「実用栄養英語B」という2つの英語の授業について、新型コロナ禍のオンライン授業の実践例を事例報告する。

本発表は科研費基盤研究C「小中高大連携を目指す持続可能な食育英語のCLIL:プログラム開発と効果検証」の助成を受けました。

発表2:「英語教育における異文化理解―中学校英語教科書を参考にして―」         早瀬沙織(中村学園大学)
〔要旨〕
内閣府『子供・若者白書』(2020)によると、グローバル社会で活躍する人材の育成のために、自国の伝統・文化への理解、外国語教育が推進されている。グローバル社会に対応するために、外国語によるコミュニケーション能力の向上が課題とされ、平成29年に告示された学習指導要領では、小・中・高等学校で一貫した目標の作成など外国語教育の改善・充実が図られている。
『中学校学習指導要領(平成29年告示)』の外国語科では、三つの柱の内「学びに向かう力、人間性等」において、「外国語の背景にある文化に対する理解を深め、聞き手、読み手、話し手、書き手に配慮しながら、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う」ことを目標として掲げている。
本発表では、2021年度から使用されている中学校英語教科書における文化の題材例を参考にし、英語教育における異文化理解とは何かについて考察する。

発表3:「自分で考え・学ぶ「英語」授業の取り組み:オンライン授業における自律学習」   田上優子(福岡女子大学)
〔要旨〕
2022年春、大学ではオンライン授業の開講要請・推奨がなされ、多くの教員、学生にとっては「初体験」だらけの新学期を迎えることになった。
本発表では2020年から2021年度におこなった「課題提示型のオンライン授業(非対面式)」の英語の授業実践を報告する。
課題の提示から提出、それについての教員からのフィードバック、授業での共有を通じて、学生に「自分自身で考えること」、「自分の学びに責任をもつこと(管理すること)」をオンラインでどこまで指導できるかを試みた。今後もオンライン・オフライン・(両者を合わせた)ハイブリッド型の授業など多様な学びを提供する際には、教員にはより柔軟で可変性のある授業運営とそのための研修機会が必要となる。また、学生には入学時から「大学での主体的な学び」について、あらゆる場面を通じて意識的・体系的に機会供与をしていくことが求められる。

発表4:「A Journey in Food: Assessing instructional strategy for cultural content input for EFL Nutrition program students」                           Darcy de Lint (ダルシー・デ・リント)(中村学園大学非常勤講師)
〔要旨〕
There are a range of issue to deal with when attempting to provide content-based language material for low to intermediate foreign language learners, particularly a large volume of specific vocabulary. In this presentation we will outline an approach to that was taken to provide 2nd year Japanese university students in an EFL classroom with real world L2 content directly related to their special field of study, nutrition. We will try to assess the effectiveness and application in a wider sphere as well as address the adaptability of the strategy in an online environment.

事務局
原 隆幸