2024年度

第241回東アジア英語教育研究会


日時:7月20日(土)15:00-17:00(予定)
場所: 中村学園大学(〒814-0198 福岡県福岡市城南区別府5-7-1、詳細は参加申し込み者にのみお知らせします)
参加費:500円
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込: https://forms.gle/KibwBwweUZh8idpx6

発表1:「プログラム改善につなげるBEVI-j利用の可能性」
佐々木有紀(中村学園大学)、石松弘幸(佐賀大学)
〔要旨〕
本発表は、2024年度に佐賀大学の学生を対象に、深層心理分析ツール、BEVI-j(Beliefs, Events, and Values Inventory日本語版)を用いて調査を行った結果を報告・分析するものである。「他者への理解」や「世界への理解」といった観点を尺度に持つBEVI-jは、大学生の留学前後の変化・成長を可視化する分析ツールとして近年普及が進んでいる。特に、従来のアセスメント・テスト等で留学成果を客観的に示すことが難しい短期間の海外留学やオンライン型のプログラムに関しては、参加学生の異文化受容やグローバル社会に対する意識の変化を数値で示すBEVI-jは大変魅力的なツールと言える。
佐賀大学では、2024年度に、短期海外留学プログラムに参加する学生やオンライン英会話授業を受講する学生を対象にBEVI-jを用いた調査を行った。同時に、留学やオンライン上の海外交流の特徴を明らかにするため、対面の異文化交流の機会が授業に含まれないe-learning教材を学習する英語クラスの受講学生についても前期の学期開始時と終了時にBEVI-jに回答させ、データを比較した。その結果、実派遣・オンライン交流ともにグローバル社会に対する意識の変化が共通教育のクラスと比べて顕著に認められた。しかし一方で、BEVI-jを用いた調査を行う過程で利用上の様々な困難にも直面し、今後、どのような形でBEVI-jを利用していくのが望ましいのか、様々な事例を考慮して検討すべきだと思われる。

発表2:「 外国語教育における異文化理解能力を育成するための参照枠の重要性」 
原隆幸(鹿児島大学)
〔要旨〕
外国語教育において、文化を教えることは必要であり、このことはグローバル化する世界においてこれまで以上に重要になってきている。しかし、教える外国語(言語)により取り扱う文化項目には差異がある。外国語教育では、2000年以降に広まったヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)により大きく変わっており、特に、言語教育面において大きく影響をしてきた。また、CEFRでは言語・複文化教育の重要性も述べられているが、CEFRには複文化教育や異文化理解教育に関する能力記述文はなかった。2020年に出たCEFRの増補版(CEFR/CV)では少し補われている。欧州評議会では、言語教育と異文化面に関する参照枠として2012年にA Framework of Reference for Pluralistic Approaches to Languages and Culture (FREPA) を、2018年にReference Framework of Competences for Democratic Culture (RECDC) を刊行した。本発表では言語教育と異文化面に関する参照枠であるFREPAとRFCDCに焦点をあて、外国語教育における異文化能力を育成するための枠組みの重要性を検証する。また、RFCDCを取り入れた授業実践を取り上げてみたい。


事務局
原 隆幸

第240回東アジア英語教育研究会


日時:4月20日(土)15:00-17:00(予定)
場所: 中村学園大学(〒814-0198 福岡県福岡市城南区別府5-7-1、詳細は参加申し込み者にのみお知らせします)
参加費:500円
参加方法:参加を希望の方は、参加申込URLより、事前登録をお願いいたします。
参加申込: https://forms.gle/m8EuDJqUTPKf9kNB8

発表1:「The Seven-Year Journey: Doing a Distance PhD」
Thomas Caton(中村学園大学)
〔要旨〕
This presentation describes the long academic journey necessary for the successful completion of an online distance PhD. It will begin from the first steps of identifying a possible research area before going on to look at both the challenges of the application process and the stages in the production of a persuasive written thesis.
Around 2014 the presenter noticed that there were difficulties in identifying changes in English language proficiency using conventional testing methods before and after short periods of study abroad. He contacted a number of universities in the UK outlining his interests before one researcher, based at Cardiff University, informed him about an innovative active vocabulary test using word association techniques that she had been working on with colleagues. Please join the presenter as he describes embarking upon his long PhD journey - encountering the complexities of online communication, the challenges of essay writing, the pleasures of international conferences, the nail-biting experience of the final Viva interview and the joys of final thesis acceptance.
The presentation will focus more on the reasons and the process of undertaking an online PhD course rather than looking the content of the research itself. It will consider the costs and benefits, the personal and motivational factors, the impact of the Coronavirus epidemic as well as the challenges of maintaining a successful work-life balance over long time periods.

発表2:「大学初年度の英語教材についての研究」
清永克己(至誠館大学)
〔要旨〕
英語は世界中で広く使われ、コミュニケーションの大切な手段の一つだと言われている。日本語と多くの点で違っているために、英語を習得には多くの時間がかかり、継続した努力が求められる。学校教育になると学習者にとって英語は、評価される教科と捉えられ、入試科目の一つと考えられている。大学の授業で実施している小テストでは、初回のクラス平均点が一番高く、それ以降は横ばいか、あるいは下がる傾向が見られる。基礎となる学習を終え、これから必要な情報を入手できるところまで実力がついていながら、英語学習から離れていく傾向が見られる。近年、特に私立大学では、AO・推薦入試で志望する学部や学科を受験する学生が増えている。本研究では、学びたい専門分野がはっきりしている学生に対し、どのような指導していくことが求められているのか考察を行なった。

発表3:「持続可能な観光のためのCLIL教材開発」
金志佳代子(兵庫県立大学)
〔要旨〕
ポストコロナのインバウンド需要が高まり、日本が新たな観光立国として推進しているなか、持続可能な観光が対応策として注目を集めている。本発表は、2024年度から3年にわたり、日本人とイギリス人の英語教員、観光学とマーケティングの専門教員が協業しながら、ニーズ分析を元に内容(Content)、言語(Language)の両方の側面からCLILプログラム・教材開発を行う計画について考察するものである。
発表者は、CLILのアプローチが教材として利用されている現状について概観し、持続可能な観光を志向するCLILの事例研究について考察する。次に、今後の研究計画として、観光学の専門教員および通訳案内士を対象とした半構造化面接を行い、日本における持続可能な観光のニーズ分析・事例研究を実施し、収集したデータ結果をもとに、CLILプログラムを基にしたアクティビティーの開発を目指すことについて述べる。研究成果の公開については、CLILシンポジウムの開催などを通じて、観光業で求められる語学ニーズと将来の現場を担う英語学習者のウォンツの乖離を埋めるべく、ニーズ分析に基づくCLIL教材、およびプログラムの開発が必要であることを明らかにしたい。
本研究は科研費基盤研究(C)「持続可能な観光振興のためのCLIL:ニーズ分析とプログラム開発」の助成を受けたものである。

発表4:「大学生のための食育英語の教材開発: 専門教員と語学教員の協業から」
津田晶子(中村学園大学)
〔要旨〕
発表者は、2007年に栄養士養成課程に英語教員として着任以来、栄養学・調理学を専門とする専門教員と協業して、栄養士や食産業で務める企業人のニーズ分析を元に、「栄養英語」「食育英語」の英語教材を開発してきた。一冊目にあたる「健康生活に見る食育と健康」(2012年、成美堂)を出版した当時は、現在と違い、国内外に栄養学に関する英語の教科書がなく、大学の英語教育でのニーズが未知数、ということで、実現までに相当数の出版社に当たる必要があった。国内外で類書がなかった理由として、英語圏では「栄養士の社会的地位が高く、そもそも、英語が第一言語ではない移民が目指す仕事ではないため、栄養士向けの英語教育のニーズがない」ということ、日本国内においては、「管理栄養士になるには国家試験が必要であり、カリキュラムが過密化しており、英語教育にまで、手が回っていない」という現状があった。(Tsuda,2012)
筆者は、日本人の管理栄養士、調理師、語学教員との協業を通じて、2012年以来、栄養士向けのESP教材、一般書としての日英バイリンガルの福岡の郷土料理本、世界の食文化を紹介するEGP教材、そして、2024年1月に、栄養系学生向けに英語で学ぶ自校学”Campus Life at NGU” (成美堂)を電子教科書として上梓した。
本発表では、英語教材開発時における専門教員と語学教員との協業のあり方について、実践例を交えて述べることにしたい。
本発表は「小中高大連携を目指す持続可能な食育英語のCLIL:プログラム開発と効果検証」の助成を受けたものである。


事務局
原 隆幸